ここ数年、貧困の問題が大きくクローズアップされています。
実際、貧富の差は広がっており、優雅な暮らしを楽しむ富裕層が増えた反面、約6人に1人が貧困層という現実もあります。
しかし、これはあくまでも平均の話。東京と地方では問題の本質が大きく異なりますので、今回は、東京と地方の貧困の原因と実態について詳しく見ていきます。
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【東京と地方の貧困問題】データで見る日本の貧困
2017年6月に厚労省が発表した、2015年の『国民生活基礎調査』によれば、相対的貧困率は15.6%でした。
前回調査(2012年)よりも減少しましたが、約6人に1人が相対的貧困となっています。
また、可処分所得の中央値は245万円でした。
この金額は余裕のある生活をするのに十分とはいえないでしょう。
過去の最高値は1997年の298万円で、そこから右肩下がりに減少し、実に17年間で43万円も下がっていることになります。つまり、それだけ低所得者層が増加しているということです。
これが、現在の日本の貧困の全体像です。続いて東京と地方を比較してみましょう。
【東京と地方の貧困問題】東京と地方では大きな格差が!
都道府県ごとの貧困の実体を探るため、山形大学人文学部法経政策学科の戸室健作氏がまとめた『都道府県別の貧困率、ワーキングプア率、子どもの貧困率、捕捉率の検討』からデータを引用しながら見ていきます。
まず、貧困率のワーストは…
2.鹿児島:24.3%
3.青森:24.1%
でした。
九州、四国、近畿、東北、北海道も20%を超える県が多い一方で、首都圏の各都県では東京が16.8%と最も高く、その他の県はおおむね15%程度にとどまりました。
つまり、政治・経済の中心である首都圏と、地方では大きな差があることがわかります。
東京やその近郊では、十分な賃金が得られるかは別として仕事はありますし、自治体やNGOなどの相談窓口も充実、支援団体の活動も活発です。
苦しいかもしれませんが、支援を受けながらギリギリで生活をすることはできるのです。
ところが、地方はそうではありません。そもそも仕事が少なく、賃金も低め、それにもかかわらず家賃や水道光熱費などは首都圏と大きくは変わらないのです。
実家暮らしであれば、家賃の問題は解決しますが、今度は介護の問題に悩まされる可能性がでてきます。
長年、地方では地縁や血縁による助け合いがあるとされてきましたが、そうした地域のコミュニティも今や分断され機能していません。
また、世間が狭いため、給付金や生活保護などを受給すると、たちまちウワサが広まるために利用しづらい面もあるようです。
【東京と地方の貧困問題】東京の学校に通っても25%は非正規雇用
しかし、東京には東京の問題があります。有名私立大学が集中する東京には、地方から多くの学生がやってきますが、学費も家賃も上昇が止まりません。
それでも、きちんと就職できれば問題はありませんが、25%は非正規雇用となるのが現実です。
つまり、無理して東京の大学に通っても、4人に1人は非正規雇用となり、いきなり貧困の危機に直面するわけです。
そのため、奨学金を返せずに破産するケースも発生し、問題になりつつあります。
また、地方と異なり人間関係が希薄なため、家賃を支払えずにホームレス状態となり、ネットカフェで暮らす人たちが都内だけで4000人いるといわれています。こうした見えにくい貧困も東京の特徴のひとつでしょう。
それでも、前述したように東京はセーフティネットが充実していますから、本当に最低限の暮らしはできるでしょう。とはいえ、娯楽も外食も楽しめないような生活が、果たして人間らしいといえるのかは大きな疑問です。
【東京と地方の貧困問題】隠れ貧困は自業自得だが…
もうひとつ、東京で特徴的なのは、「高収入なのに貯蓄がない」という隠れ貧困の存在です。信じられない話ですが、年収1000万円でも貯蓄ゼロという世帯が存在するのです。
なぜこんなバカなことが起きるのかというと、ムリな住宅ローンや見栄を張った生活よる浪費が原因だそうです。
つまり、自業自得なのですが、こうした層が将来破綻して貧困層になる可能性が指摘されています。
いかがでしたか?
ひとくちに貧困といっても、東京と地方では問題の本質が大きく異なることが理解いただけたのではないでしょうか?
自分が貧困に陥らないようにするためにはどうしたらいいのか?
将来設計なども含め、一度真剣に考えてみてください。
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【ライター】
小日向 淳(フリー編集・ライター)
家計の節約術から資産運用、老後資金、相続対策などを中心に構成から執筆までを手がける。『法改正対応 バッチリ相続まるわかり 2015-16年版』(学研マーケティング)/『これで安心! 月5000円からはじめる老後資金の作り方』(宝島社)/『親の入院・介護で困らない!)』(宝島社)ほか、書籍、雑誌、ムック、Web記事など多数。
<参考文献・サイト>
『国民生活基礎調査(2015年)』(厚労省)
『山形大学人文学部研究年報 第13号(2016.3)都道府県別の貧困率、ワーキングプア率、子どもの貧困率、捕捉率の検討』
東京新聞:「隠れ貧困」家庭が増加 高収入だが将来への貯蓄せず
『週刊SPA! 2017年8月15日・22日合併号』(扶桑社)