節度を守って楽しめば、飲酒はストレス解消法の一つになります。しかし近年では、ごく普通の主婦がアルコール依存症ひとつである「キッチンドリンカー」になるケースが増えているようです。
主婦は気軽に外出先でお酒が飲めない事情もあり、自宅で家事の合間にアルコールを飲み、いつの間にか量が増えキッチンドリンカーになっていく……といった状況に陥りがちです。主婦のキッチンドリンカーとは何なのか、そして一体どの程度からアルコール依存症と診断されるようになるのかをお話しして行きましょう。
そもそも「キッチンドリンカー」とは何なのか?
キッチンドリンカーとはアメリカで生まれた言葉です。キッチンに立つ女性が、料理に使うお酒を味見がてらに飲んでいき、いつしかキッチンに立つ理由がお酒を飲むことが代わり、アルコール依存症に陥っていくことが由来になっています。
現代のキッチンドリンカーとは、ごく一般的な主婦に多いようです。厚生労働省が運営している「e-ヘルスネット」によると、主に女性が家事をしながら飲酒することでストップできなくなり、アルコール依存症に繋がっていく行動パターンと定義されています。
最初は週末に夫とともに軽く晩酌する程度だったのに、いつのまにか毎日のように一人で飲酒している……といった状況に陥ったときには注意が必要です。
ごく一般的な主婦がキッチンドリンカーなってしまいやすい2つの理由
なぜ一般的な主婦がキッチンドリンカーになってしまうのかと言うと、理由としては2つがあげられます。
理由①:ストレス発散法としてアルコールが手軽
自宅でできるストレス発散法として、飲酒は非常に手軽です。外で飲むのであれば、深酒をしたときには、周囲の人がストップをかけてくれるでしょう。
しかし、自宅で飲んでいるときには誰も止めてくれる人がおらず、さらに家であるといった安心感から、多量のお酒を飲んでしまうのです。とくにこれまで外でバリバリと働いていたようなキャリアウーマンの場合、専業主婦になった際の手持ち無沙汰や、社会との関わりがなくなった不安を埋めるため、ついお酒に逃げてしまうこともあります。
キッチンドリンカーの怖いところは、元からお酒が好きだったというわけでもない女性でも、アルコール依存症に陥りやすいといった点があります。イライラや不安を手軽に解消できる方法なので、いつのまにか量が増えていき、気づいた時にはアルコールなしでは生活できなくなっているといった状況を招く恐ろしさがあります。
理由②:女性の方がアルコール依存になりやすい傾向がある
女性の体型は男性よりも小柄で脂肪の割合が多いため、体内の血液量も少なくなっています。そのため同じ量の飲酒をしたとしても、血中アルコール濃度が男性と比べて女性の方が高くなってしまうでしょう。
その結果、女性の方がアルコール依存を発症しやすくなるといわれています。
キッチンドリンカーとお酒を嗜む程度の違いを知ろう
お酒も嗜む程度であれば、ストレス解消になるでしょう。しかしキッチンドリンカーの女性も、最初は嗜む程度といったところからスタートしています。
いつの間にかお酒の量が増えていき、気づいたときにはキッチンドリンカーになっていたというパターンがほとんどです。実際にアルコール依存症と診断されるには、どの程度のお酒を飲んだら診断されるのでしょうか。
もしかして自分も危険?まずはセルフチェックをしてみよう
実は「アルコール依存症」というのは、血液検査や尿検査でわかるものではありません。体内からアルコールが排出されるのは、尿と汗、呼吸です。
検査ではアルコールが体内にあるのか?といったことまでは分かるのですが、依存の状態かどうかは判断できないのです。そのためアルコール依存症というのは、あくまで自己申告制になります。
周囲からの意見または本人の気づきによって、病気かもしれない……と思ったときだけ、アルコール依存症だと判断されるでしょう。あくまで気づきが必要なことから、アルコール依存症の治療をスタートするまでは難しく、なかなか自分が依存症だと認めることができないため、気づいた時には肝臓に大きなダメージを受けている状態もあります。
そこでまずはWebで簡単にできる、セルフチェックを利用してみましょう。そこから、自分にとって現在のアルコール摂取量が、適切なものであるかが分かるはずです。
アルコール依存症 WHO(世界保健機構)チェックシート
http://alcoholic-navi.jp/checksheet/
新久里浜式スクリーニングテスト
https://kurihama.hosp.go.jp/
アルコール依存症・実際のお酒の量は?
具体的にはどのくらいの量と頻度で、アルコール依存症と判断されるのでしょうか。少量でも毎日飲酒する習慣を長く続けていくことで、アルコール依存症になる可能性が高まります。
WHOのチェックシートから判断してみると、缶ビール1本やワイン1杯程度あっても、危険で有害との表示がされています。チェックシートはそのときの心理状態によっては別の結果になることもあるため、一概に同じ結果だとはいえません。
まずは一度セルフチェックをして、お酒の量に関わらず、自分もアルコール依存症の傾向があるのかどうかを確認してみましょう。
1.毎日缶ビール1本(350mlまたは500ml)、週末は多量飲酒を想定 →「危険で有害な飲酒。量を減らすか専門医の受診をおすすめします。」
2.週2~3回缶ビール1本、週末は多量飲酒を想定 →「危険で有害な飲酒。量を減らすか専門医の受診をおすすめします。」
3.ほとんど毎日多量飲酒 →「アルコール依存症が疑われる飲酒。断酒か専門医の受診をおすすめします。」
※1~3はWHO(世界保健機関)スクリーニングシートの診断結果をまとめています。詳しく知りたい方は下記のURLへアクセスしてください。
http://alcoholic-navi.jp/checksheet/
お酒の量が増えているのならば、減らす努力と環境を変える努力が大切
もしキッチンドリンカーの傾向があるかもしれないと気づいたとき、まずはアルコールの量を減らすというのは良い行動です。しかし、なぜお酒を飲んでしまうのかといった原因も同時に解消しないと、再びアルコールを摂取することになってしまうでしょう。
育児で行き詰まっているのであれば、外部に助けを求めたり、ときには短い時間でも外に働きに出るのも悪くないでしょう。また、お酒を飲むのは家族と一緒のときだけといった、ルールを決めるのも良さそうです。
アルコールを過剰に欲してしまうというのは、心がSOSを出していることと同じ。ときには専門家のカウンセリングを受けるなどして、自分の心と向き合い、解決方法を探していきましょう。