専門医に聞く、子どもの「便秘」の現状 原因・症状・家庭でできる予防&解消法とは?

投稿日:2020-07-22 更新日:

子どもの約半数が便秘に悩んでいるといいます。親が気付くためのサインや改善法を、医師に聞きました。

子どもの便秘、原因や改善法は?

 

子どもの便秘患者が増えているといいます。中には、親が気付かず悪化してしまうケースもあるようです。

便秘に悩む子どもの実態や、親が心得ておくべき適切な対処法とはどのようなものでしょうか。松生クリニック院長で、著書に「子どもの便秘は今すぐなおせ」(主婦の友社)や「日本一の長寿県と世界一の長寿村の腸にいい食事」(PHP新書)などがある、大腸疾患専門医の松生恒夫さんに聞きました。

親の8割が「自分の子どもは大丈夫」

Q.そもそも、便秘とはどのような症状を指すのでしょうか。

松生さん「『便秘治療ガイドライン(2017年)』では、便秘とは『本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態』と定義されています。毎日1回以上出ない場合、もしくは、毎日出てもおなかが張っているという自覚があれば、便秘傾向なので注意が必要です」

Q.子どもの便秘を巡る現状について教えてください。

松生さん「2011年に6~12歳の子どもを持つ母親約1200人を対象に行った調査では、『毎日は排便がない』子どもが4割以上に上りました。先述の通り、毎日排便があってもスッキリ出たと感じられなければ便秘傾向なので、そうした子どもも含めると約5割は便秘と言えるでしょう。私のクリニックにも、親子で便秘症の治療に来られる患者さんが増えています。

一方で、『自分の子どもの便通は快腸』だと思っている親は約8割というデータもあります。つまり、親が気付かずに放置されているケースが多いのが現状です」

Q.子どもと大人の便秘には、どのような違いがありますか。

松生さん「大人の便秘は、S字結腸(S字型にカーブしながら直腸へつながる部分)にたまります。運動や睡眠の不足、加齢による腸内環境の変化(善玉菌が減るなど)、偏った栄養などが原因です。女性の場合は、ホルモンの変化や冷えが原因になることもあります。また、長期的に薬に頼ったことにより、内臓感覚(便意)が低下しているケースもあります。

3歳までの子どもの便秘は直腸(肛門直前の部分)にうんちがたまります。そのため、腹痛やおなかのハリを感じやすいです。小学生の場合、『学校でトイレに行きたくない』という心理的原因が便秘を悪化させるケースも少なくありません」

Q.便秘になりやすい子どもの特徴とは。

松生さん「偏食や寝不足の子どもは便秘になりやすいです。また、先述の通り、『友達にからかわれたくない』『学校のトイレが嫌』などの気持ちがあると、便意を感じるタイミングで排便しない状況が続き、便秘の原因になります」

Q.子どもの便秘が体に及ぼす影響とは。

松生さん「腹痛や肛門痛、イライラ、不安感、学校嫌いにつながります。放置しておくと、将来的に大腸がんにかかりやすくなる他、腸内環境の悪化によって免疫力が低下し、花粉症などのアレルギーや風邪などの感染症にかかりやすくなると考えられます。

また、腸内に老廃物がたまると、アンモニアやスカトール、インドールなどの有毒ガスが発生し、これらが血液に乗って全身に運ばれると、口臭や体臭、肌荒れの原因となります」

Q.親が子どもの便秘に気付くためのサインや変化はありますか。

松生さん「以下に一つでも当てはまれば、便秘傾向にあると判断してよいでしょう」

・毎日排便がない
・いつもうんちが硬い
・量が少ない
・排便を「痛い」と訴えることがある
・おならが臭い
・強くいきんでいるのにスムーズに排便できない
・排便後もおなかがスッキリしないようだ
・うんちに血がついていることがある

Q.病院に連れて行くべき症状の目安はありますか。

松生さん「以下のことが一つでも当てはまる場合、緊急度が高いと判断してください。2歳前後の子どもの場合は、腸重積(腸の一部が重なり合ってしまう病気。放置すると腸組織の壊死を起こす)の疑いもあるので注意が必要です」

・3日以上うんちが出ない
・激しい痛みを訴えるがしばらくすると落ち着く
・下血や血の混じった便が出る
・吐き気がある
・激しく泣く
・顔色が悪い

Q.病院では、どのような治療・処方が行われますか。また、市販薬を使ってもよいのでしょうか。

松生さん「たいていの病院では、まず下剤が処方されます。子どもには、飲みやすい無味・無臭の液体の下剤が処方されるケースが多いですが、私のクリニックではオリゴ糖の下剤を処方します。子どもには市販薬はあまりお勧めしません。まずは、生活習慣や食生活を改善させることが最優先だと思います」

Q.家庭で子どもの便秘を予防・解消する方法を教えてください。

松生さん「いいうんちを作り、腸内環境を整える食べ物を積極的に取りましょう。特にお勧めの食材がキウイフルーツです。キウイには食物繊維が豊富で、腸に必要な栄養がたっぷり含まれており、腸内の善玉菌を増やしてくれます。食物繊維の中でも便を軟らかくする水溶性食物繊維が豊富なので、便秘に効果的です。

イチオシの食べ方が『オリーブキウイ』です。キウイを半分に切り、スプーンでひとすくい食べます。開いた穴にオリーブオイルを垂らして食べてください。オリーブオイルはオレイン酸が豊富で便の滑りを良くするので、キウイと合わせることで便秘解消の効果が高まります」

(ライフスタイルチーム)

 

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