雨の日の事故原因、「発見の遅れ」
クルマのヘッドライトについてはそもそも、夜間以外の時間でも「高速道路と自動車専用道路においては視界が200m以下、その他の道路においては視界が50m以下の場合は灯火をつけなければならない」と、道路交通法にもとづく道路交通法施行令で定められています。霧や吹雪で視界がいちじるしく制限される状況などは、まさにこれにあたります。
熊本県警による「ライト点灯」の呼びかけは、たとえ法律で定める基準以上の視界があったとしても、雨が降っている時はクルマも歩行者も視界が悪くなるため、事故発生を防ぐために推奨しているのだといいます。
「クルマの場合、前方の視界はもちろん悪くなりますが、サイドミラーやリアウインドウにも雨粒がつくことで後方の視認性も悪くなります。ほかにも、交差点やカーブにあるミラーに雨粒がついて、クルマの姿が映りにくくなる状況が考えられます」(熊本県警 広報担当)
また、歩行者も傘で視界の一部がさえぎられるうえ、雨音によって近づいてくるクルマの音も聞こえにくくなるといいます。熊本県警の担当者は、「クルマのヘッドライトを点灯することで、自分の存在を周りのクルマや歩行者に『早く知らせる』ことが期待できます」と話します。
「知らせる」ライト、自動車レースの世界でも
熊本県警の担当者によると、県内ではやはり、雨の日にクルマ同士の追突事故やクルマと歩行者の接触事故が多くなる傾向だといいます。首都高速道路も雨の日の交通事故について統計を発表しており、「1時間あたりの事故発生件数では、雨天時は晴天時の4倍」(2016年度)としています。
「雨で路面がすべりやすくなり、さらに視界が悪くなって相互の発見が遅れることから、事故が起きやすくなると考えられます」(熊本県警 広報担当)
そこで「ライトの点灯」です。自分の存在を周りに「知らせる」ためにライトを使うというのは、雨天の場合だけでなく、薄暗い夕方の時間にクルマのライトを点灯したり、夜間に自転車のライトを点灯したりする行為にも共通する考え方で、実は自動車レースの世界でも当然のように行われています。
たとえば、日本国内で開催されている自動車レースのひとつ「SUPER GT」は、走行性能の異なる2クラスのクルマが同時にサーキットを走り、追い越しが頻繁に発生するという特色があり、雨で視界が悪い時は審判から「ライト点灯」の指示が出ることがあります。積極的にヘッドライトを点灯することが、雨の日に高まる事故のリスクを軽減することになるでしょう。
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【写真】雨を検知して自動点灯、BMWのオートライト