蓄積されたアセトアルデヒドが原因
二日酔いの代表的な症状といえば、吐き気や胸焼け、頭痛、だるさなどですが、そもそも二日酔いの体には何が起きているのでしょうか。
「お酒を飲むと、有害物質のアセトアルデヒドが生成されます。これを解毒するのが肝臓ですが、肝機能でカバーできる以上の量を飲むと分解しきれず、蓄積されたままのアセトアルデヒドによって二日酔いの症状が出るのです」(麻生さん)
肝機能がダウンすると血糖値が下がり、頭痛などを引き起こす原因に。またアルコールの利尿作用で体内の水分量が減少して脱水状態になったり、胃腸の粘液が減って消化機能が低下したりするなど、さまざまな要因が組み合わさって症状が現れます。
「二日酔いの症状を和らげるには、アルコールやアセトアルデヒドの解毒に必要な栄養素を効率良く摂取できる食べ物や飲み物を取りましょう」
シジミのみそ汁、梅干し、大根おろし…
麻生さんによると、二日酔いに効果的な栄養素が豊富な食べ物は以下の通りです。
【シジミのみそ汁】
二日酔いに効く食べ物として最もよく知られているのが「シジミのみそ汁」。アセトアルデヒドは体内の葉酸を壊してしまうため、よくお酒を飲む人は葉酸が欠乏しがちですが、シジミは葉酸が含まれるほか、アミノ酸やビタミンB12には、アセトアルデヒドの分解を早める効果があります。「また、シジミにはオルニチンが豊富に含まれており、肝機能を高めてくれます。みそに含まれているコリンは、肝脂肪を予防したり、二日酔いを早く覚ましたりする効果のあるレシチンを作る原料となります。シジミを買いに行けない場合、まずはみそ汁だけ飲んでもよいでしょう」。
【柿】
柿には、飲酒で不足しがちなビタミンAやビタミンC、カリウムなどの栄養が多く含まれています。柿の渋みはタンニンという成分で、アルコールの分解を早める力があるほか、頭痛を和らげたり、利尿を促したりする効果も。飲酒の前後でもオーケーですが、食べやすい大きさに切ってサラダに入れたり、薄く切ってわさび醤油で食べたりと、お酒のアテとしても効果大です。
【梅干し】
梅干しには、肝機能を活性化させる効果のあるピクリン酸が含まれるほか、吐き気などの症状を和らげるのにも効果的です。梅干し1個を湯飲みに入れて、お湯を注ぎ、梅干しを箸で崩しながら「梅干し湯」にして飲むと、塩分が緩和されて飲みやすくなります。
【卵】
卵黄に含まれるシステインという成分が、アセトアルデヒドの分解を促進する効果を持っています。高タンパクの卵白は肝機能を高めるため、全卵を食べるのがオススメ。
【大根おろし】
消化酵素が豊富に含まれている大根は、二日酔いによる胃の不調を原因とするむかつきや吐き気の改善に効果あり。飲酒時、大根のサラダなどをおつまみとして食べることで、アルコールを分解する際の肝臓の働きを助け、肝臓の負担を軽減する効果があります。二日酔いの朝、大根おろしやその搾り汁などを取ることで肝機能の回復が促されます。
経口補水液、トマトジュース、ココナッツウオーター
続いて、二日酔いの時にオススメの飲み物は以下の通りです。
【経口補水液】
1リットルのビールを飲むと1.1リットルの水分が出ていくと言われるほど。アルコールによる利尿作用や、アルコールの分解に水が必要なため、飲み過ぎた夜や翌朝は脱水気味に感じる人も多いはずです。ナトリウムやカリウムなど電解質も同時に失われているため、水分と電解質が素早く吸収される経口補水液がオススメです。
【トマトジュース】
トマトジュースと組み合わせるお酒もあるように、トマトには二日酔いを緩和する効果があることが知られています。血中アルコール濃度を低下させたり、アルコールの代謝に関わる酵素の働きをアップさせてくれたりする、などの効果もわかっています。
【ココナッツウオーター】
最近、見かけるようになったココナッツウオーターには、カリウムやナトリウムなどのミネラルが大量に含まれています。浸透圧も人間の体液とほぼ同じであることから「天然のスポーツドリンク」「飲む点滴」とも呼ばれるほど。体内でのアルコールの分解を助け、二日酔い対策に有効です。
最後に、飲みすぎた時に控えた方がよい食べ物について聞きました。
「お酒を飲みすぎた時、胃腸は大きなダメージを受けている状態です。脂っこいものや味の濃いもの、刺激の強いものなどは胃に大きな負担をかけるため、ダメージがさらに悪化する可能性大。シメのラーメンなどは要注意です」
(オトナンサー編集部)
ライター:麻生れいみ(あそう・れいみ)
管理栄養士
大手企業の特定保健指導・栄養相談を務める傍ら、病院の臨床研究において栄養療法を監修。医療と予防医学、栄養学を深く結びつける役割を担うべく料理研究を行う。ダイエット指導においては、自らもやせた経験を基に、これまでに約6000人以上を指導。日本病態栄養学会会員、日本抗加齢医学会会員、食育栄養インストラクター。近著に「免疫栄養ケトン食で がんに勝つレシピ」。公式ブログ(https://ameblo.jp/reimi-aso/)。