
分散投資はリスクを低減するための有効な手段の一つだ、と前回書きました。
今回はその理由について少し説明していきます。基本の考え方がわかれば、その後自分なりに応用していくことも可能になってくると思います。
1つのカゴに卵を盛るな!

卵を一つのカゴに盛ると、そのカゴを落とした時には、全部の卵が割れてしまうかもしれません。
しかし、複数のカゴに分けて卵を盛っておけば、一つのカゴを落として、そのカゴの卵が割れて駄目になったとしても、他のカゴの卵は影響を受けずにすみます。
これは、分散投資のメリットを表す格言として語り継がれている言葉です。
特定の商品だけに投資をするのではなく、複数の商品に投資を分散させることで、リスクを低減できるとの教えなのです。

具体的な例を出してみましょう。円高になると値上がりする(円安になると値下がりする)商品があるとします。
もし相場が円安局面を迎えた場合、この商品だけを持っていたら、資産価値を下がってしまうことは確実です。
ここで、円安になると値上がりする(円高になると値下がりする)を半分持っていたとします。その場合は、お互いが補完し合って、資産価値の下落を防ぐことができます。これが、分散投資によるリスク低減の基本的な考え方です。

もちろん、このふたつの商品だけを持っていたのでは、資産は減らない代わりにいつまでたっても増えませんから、実際には複数、4つ程度の商品を組み合わせるようにします。(こうした金融商品の組み合わせをポートフォリオと言います)
投資するタイミングも分散できる

「下がった時に買い、上がった時に売る」
必ずもうかる秘訣はこれに尽きます。
しかし、一般の人に可能でしょうか。プロのトレーダーのように徹底的に市場をチェックする時間は私たちにはありません。
そこまでしているプロのトレーダーでも、市場の動きを予測るのは困難です。
ですから、一つの時点だけで購入し、それだけを持ち続けるのは、やはりリスクがあるのです。

このリスクを低減させるには、買うタイミングを増やすことです。
毎週・毎月など時期を決めて、一定額を投資し続けます。相場が低い時期は多くの口数が購入でき、逆に高い時は少ない口数になります。

仮に、2006年7月から10年間、日経平均株価に連動する投資信託を毎月1万円購入したとしてみましょう。
投資額は120万円ですが、投信信託の額面は約187万円になり、単純な(差し引かれる税金などを考慮しない)利益は約67万円になりました(筆者のシミュレーションによる)。
この10年の間に、リーマン・ショックや東日本大震災による株価の大幅下落があったにも関わらず、です。時間を分散させることでも、リスクを低減させられることがわかります。

そして、投資先の分散と時間の分散とを組み合わせることで、よりリスクを低減させながら、リターンを期待することも可能になるのです。
中小企業診断士、ライター。
転職を繰り返していたため、他人より退職金が少ないことに不安を覚え、2008年ころより資産形成のために投資信託を活用した金融投資を開始。当初はインデックス投資を中心に運用していたが、徐々に投資哲学に共感できるアクティブファンドに軸足を移す。ただし、積立を基軸とする「コツコツ投資」のスタイルは維持している。
中小企業診断士兼ライターとして多くの経営者にインタビューさせてもらう中で、成長する経営者の「お金に対する哲学」を学ぶことができた。
現在は、経営者の資産形成のアドバイスもできるようになることを目指している。
主な執筆先は、クーリエジャポン、企業診断(同友館)、道経塾(モラロジー研究所)、など