毎日磨いているのに…「虫歯」になりやすい人、なりにくい人は何が違う?

投稿日:2021-03-26 更新日:

子どもの頃から悩まされてきた人も多い「虫歯」は「できやすい人」「できにくい人」がいるようです。なぜ、違いがあるのでしょうか
虫歯のできやすさの違いとは?
放っておくと痛みも治療も長引いてしまう「虫歯」。どんなに丁寧に歯磨きをしていても虫歯になってしまう人もいれば、歯磨きの回数・時間が少ないにもかかわらず、虫歯になりにくい人もいて、「虫歯のなりやすさには個人差がある」と感じる人は多いようです。ネット上では「毎日、時間をかけて歯を磨いていたのに、虫歯が見つかってショックを受けた」「夫は私よりも歯磨きが適当なのに、なぜかずっと虫歯ゼロ」「虫歯になりにくい人がうらやましい」などさまざまな声が上がっています。

虫歯ができやすい人/できにくい人には、どのような違いがあるのでしょうか。吉祥寺まさむねデンタルクリニック理事で歯科医師の園田茉莉子さんに聞きました。

口内環境や食習慣が影響

Q.そもそも、「虫歯」とは何ですか。

園田さん「私たちの口の中には、常にさまざまな種類の細菌がすみ着いています。虫歯を作る細菌は、食事に含まれる糖分を餌として酸を作り出します。この酸によって歯の表面が少しずつ溶かされていき、歯を修復する『再石灰化』でも元に戻らなくなるまで穴が開いてしまった状態を『虫歯』といいます。

歯の頭の部分は歯の中心にあって神経や血管を含む『歯髄』という組織、それを覆う象牙質、さらに、その外側にあるエナメル質の3層から成ります。歯科医師は通常、虫歯の程度を5段階(CO、C1、C2、C3、C4)に分けて考えています。C2以降の虫歯は歯髄に近づいていくため、痛みを感じることが多くなります。また、C3以降の虫歯の治療では、歯髄、つまり神経を取り除く必要が出てきます」

  • CO(シーオー)→ごく初期の虫歯です。まだ処置の必要がなく、再石灰化が期待できるため経過観察をします。基本的には痛みはありません。
  • C1→最も外側のエナメル質の範囲のみで進行している虫歯です。基本的には痛みはありません。
  • C2→エナメル質より内側の象牙質まで進行している虫歯です。
  • C3→象牙質より、さらに内側の歯髄(神経)まで達している虫歯です。
  • C4→C3よりさらに進行し、歯の頭が崩壊していて、原則として抜歯になるものをいいます。

Q.虫歯になりやすい人、なりにくい人がいるのは事実でしょうか。

園田さん「事実です。虫歯は『口内環境』『食べ物』『細菌』『時間』の要因によって、なりやすさに影響が出ます。

まず、口内環境の要因ですが、子どもの時期に歯の結晶の構造が強く作られるかどうかで、虫歯菌が作る酸にどれだけ耐えられるか違いが出ます。また、歯並びや歯の形で、細菌の停滞の仕方が変わります。唾液には虫歯菌の出す酸を薄めるだけでなく、強い酸性を中和する役割である『緩衝能(かんしょうのう)』や抗菌作用などがありますが、これらも唾液の性質によって個人差があり、機能が弱いと虫歯のリスクが上がります。

食べ物の要因としては虫歯菌が餌とする糖の量が多いほど、また、細菌要因では、お口の中に存在する虫歯の細菌の量が多いほど、それぞれ虫歯リスクが高くなります。時間については、食事や間食をする回数やタイミングが虫歯の発生に影響します」

Q.虫歯になりやすい人、なりにくい人のそれぞれにみられやすい特徴とは。

園田さん「先述のような先天的な部分以外では、生活習慣によって虫歯リスクが上がっていることもあります。中でも、大きく影響するのは食習慣と歯磨き習慣です。食事の回数が多い場合やだらだらと食べ続けてしまう場合など、歯が糖にさらされている時間が長いほど、虫歯菌が酸を作る量も多くなり、歯を溶かしやすくなります。糖分を多く含む飲食物を頻繁に摂取している場合も同様です。

また、歯磨きの習慣がしっかり身に付いていない場合や就寝前に歯磨きをしていない場合などは、寝ている間も口内に細菌の作った酸がそのまま残った状態になり、歯を溶かすリスクが上がります。歯磨きをしているつもりでも、必要な場所に歯ブラシをしっかりと当てられていない場合は歯垢(しこう)を落とせていないため、虫歯になりやすくなります」

Q.虫歯になりやすいタイプかどうかは、どのようにして知ることができますか。

園田さん「虫歯菌の量を測定するキットや、唾液の緩衝能の強さなどを測定するキットなどを取り扱っている歯科医院で調べることが可能です。また、自分で歯並びの状態や生活習慣を見直すことでも気付くことがあるかもしれません。しかし、虫歯発生のリスクはその要因の1つが悪いために上がるのではなく、個人の口内環境・食べ物・細菌・時間の4つの要因が互いに影響し合って上がるものなので、これらの要因全てに気を使う必要があります」

Q.虫歯のなりやすさは何らかのきっかけ、原因で変わることもあるのでしょうか。

園田さん「先天的な要因が変化することはありませんが、食習慣や歯磨き習慣を正すことで虫歯リスクを大幅に低くすることは可能です。反対に、これらの習慣がおろそかになることで、虫歯リスクが格段に高くなってしまう恐れもあります」

虫歯になりにくい人の「落とし穴」

Q.「自分は虫歯になりにくいタイプだから」と歯磨きをサボりがちになっている人もいるようです。問題ないのでしょうか。

園田さん「問題があります。虫歯ができやすい人(あらゆる要素を含めて)は10代、20代で既に虫歯を作ってしまっていることが多いのですが、実は、虫歯になりにくい人たちの方がリスクが高い歯の病気があるからです。

虫歯になりにくい人たちは虫歯治療のために歯科医院へ行く機会が少ない、あるいは全くない状態で若い頃を過ごし、10代、20代の間に歯科をあまり受診していない傾向があります。しかし、歯周病対策の観点からは、それはとても危険なことです。歯周病が本格化するのは30代以降で、歯が丈夫な人は歯医者に行く機会がないまま、30代、40代、50代…と過ごしていくことになります。そして、歯茎に異変を感じて歯科を受診したときには、重度の歯周病になっていて手遅れというケースが多々あります。

虫歯と歯周病はそれぞれ、別の菌が引き起こす病気なので、『虫歯になりにくいから』といって『歯周病にもなりにくいとは限らない』のです。これを勘違いして、『虫歯になりにくい=お口の病気になりにくい』と思っている人は大勢います」

Q.虫歯になりやすい人が虫歯を作らないようにするために、日常生活で特に意識・行動した方がよいことはありますか。また、虫歯になりにくい人についても、日常生活上での注意点をお願いします。

園田さん「虫歯になりやすい人はもちろんのこと、虫歯になりにくい人も歯磨きの習慣と歯ブラシの当て方はしっかりと見直し、正しておくことが大切です。先天的な虫歯のリスク要因は根本から変化させることはできませんが、歯磨きをしっかり行うことでカバーできます。

歯ブラシはヘッドがあまり大き過ぎず、歯の一本一本を個々に磨けるような大きさのものを使用するとよいでしょう。虫歯予防のためには、歯のどの面も磨き忘れないようにすることです。とはいえ、歯ブラシで届く範囲にも限りがあります。永久歯で虫歯になりやすいのは、歯ブラシだけでは届かない歯と歯の間です。この部分はデンタルフロス(歯間清掃用の糸)を使う必要があります。また、歯と歯の間の歯茎のところに隙間がある人は隙間のサイズに合った歯間ブラシを使って、歯垢を除去することが大切です。

どんなにしっかり歯磨きをしている人でも、歯垢が固まった『歯石』が付くことはあります。この歯石自体が虫歯に悪影響を及ぼすことは少ないですが、歯石があることで歯垢が停滞しやすくなります。歯垢は細菌の塊なので虫歯に悪影響を及ぼします。そのため、症状がなくても3カ月~半年に1度は歯科医院に定期検診として通い、歯石取りを受けていただくことをおすすめします。

ちなみに、この『3カ月~半年』というのは、症状がなくても気付かないうちに虫歯が進行している可能性のある期間です。虫歯は予防が何より大切にはなりますが、できてしまった虫歯の早期発見、早期治療のためにも定期検診は大切です」

(オトナンサー編集部)


園田茉莉子(そのだ・まりこ)
歯科医・医療法人社団正美会 吉祥寺まさむねデンタルクリニック理事
日本大学歯学部卒業。日本大学歯学部歯科病院で研修後、口腔外科を経て2012年4月より現職。クリニックでは、外来診療(一般歯科診療・口腔外科・インプラント・矯正)および訪問歯科診療を行っている。訪問診療は9年の経験あり。吉祥寺まさむねデンタルクリニック(http://kichijoji-masamune.com/)。

 

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