塗料に重曹をぶつけて落とす
橋脚やトンネルの壁といった道路の構造物に、スプレー塗料で落書きされている様は全国的に見られるものです。山形県村山総合支庁の西村山道路計画課によると、これまでそうした落書きへの対処は「上からペンキで塗りつぶすケースがほとんど」だったといいます。
一般家庭レベルでは、市販の溶剤を使用して塗料を除去することもあるかもしれませんが、道路構造物においては「化学薬品がコンクリートに悪影響を与えることもある」ため、塗りつぶすのが一般的だそうです。
そうしたなか西村山道路計画課は2017年8月1日(火)、山形県寒河江市で行われた橋やトンネル壁面への落書きの除去作業において、ある工法を試験的に導入し、落書きを跡形もなく除去することに成功しました。
「エコロビーム工法」と呼ばれるその工法は、特別な除去剤を使用することなく、水と重曹だけで行うそうです。同工法の特許を有する清掃・土木修繕業の株式会社やおき(山梨県大月市) 藤本恭司代表に話を聞きました。
――本当に水と重曹だけなのでしょうか?
はい。正確には摂氏140度のスチームと重曹を、高圧洗浄器で同時噴射しています。
――どのような仕組みで塗料が落ちるのでしょうか?
塗料に重曹を高圧でぶつけてこそぎ落とし、お湯で流すイメージです。コンクリート表面などの微細な凹凸にも重曹が入り込んで塗料をこそげ落とすので、跡が残ることもありません。薬剤を用い塗料と化学反応させて除去する方法と比べて、作業者に健康的な影響がなく、天候にも左右されないといったメリットがあります。
「本来の姿」をあらわにすることが重要なワケ
――重曹はどれほど使うのでしょうか?
8平方メートルに対して3袋、およそ75kg使います。コストは規模にもよりますが、ほかの工法よりも若干安いか、同程度です。
――どのような構造物にも適用できるのでしょうか?
コンクリートやアスファルト、レンガ、タイルなど、素地そのままの構造物に適用することが多いです。ガードレールやシャッターなどは、もともとの塗料も落としてしまうので難しくなります。
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スプレー塗料による落書きは、美観上の問題だけでなく「表面の微細な凹凸に塗料が入り込んでしまい、コンクリート劣化度の基準となるひび割れがわからなくなってしまうので、構造物を点検するうえで障害になる」(藤本代表)のだそうです。エコロビーム工法は、塗料除去のために溶剤などを上塗りすることなく、本来の姿が現れる点でも有効だといいます。
やおきの藤本代表は7年前にこの「エコロビーム工法」を開発。施工業者は2017年現在、全国に40社以上あるそうです。
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【画像】「エコロビーム工法」のしくみ