「産後の母親は“気が立った獣”状態。勝手に赤ちゃんに触らないでほしい」
こうした、産後の「ガルガル期」に関する投稿がネット上で話題となっています。ガルガル期とは、産後の母親が無性にイライラしたり、攻撃的になったりする状態を指す通称です。動物のメスが出産後、子どもに近づいてくるものに対して神経質に威嚇(いかく)する姿を連想させることから、こう呼ばれています。
SNS上などでは、「とてもよくわかる」「乳児幼児連れの母はクマだと思ってほしい」「旦那にイライラして八つ当たりしてしまいました」「外出先で赤ちゃんをベタベタ触ってくる人が本当に嫌だった」など、さまざまな体験談が寄せられています。
ガルガル期の原因や対処法について、アヴェニューウィメンズクリニックの福山千代子院長に聞きました。
周囲の理解と共感も大切
Q.産後にガルガル期が起こる原因や症状について教えてください。
福山さん「妊娠中は女性ホルモン(エストロゲン)が大量に分泌されています。その分泌量が出産を機に一気に減ることで精神が不安定になり、産後うつと呼ばれる症状や、イライラしやすくなるなどの症状が起こります。中には、パートナーにきつい物言いをしたり、赤ちゃんが他人に触られることに対して強い嫌悪感を覚えたりする人もいるようです」
Q.ガルガル期はいつ始まって、いつ終わるのでしょうか。
福山さん「時期や期間は人それぞれです。一般的には産後ですが、中には、妊娠中からずっとイライラしているという人もいます。終わりの時期も人によって違いますが、ホルモンのダイナミックな変化により起こるものなので、出産を終え、女性ホルモンの分泌量が非妊娠時と同じくらいに減った状態に体が慣れれば、次第に症状は落ち着くと考えられます」
Q.症状を和らげる方法はありますか。
福山さん「産後のイライラは、妊娠・出産により誰でも起こりうる症状です。『自分にもそういうことが起こるかもしれない』ということを知り、心に余裕を持って対処していくことが大切です。つい攻撃的になってしまったとしても、ホルモンの影響によるものですから、自己嫌悪に陥る必要はありません。自分を責めないことです」
Q.精神状態が不安定になる産後の時期に、母親本人やその周囲が気を付けるべきことはありますか。
福山さん「産後、精神が不安定になるかもしれないということを本人も周りの人間も理解しておくことで、イライラしてしまったり、そのイライラをぶつけられたりしても、多少は『仕方のないこと』として捉えられる心の余裕が生まれるのではないでしょうか。
また、育児でストレスを抱えがちな母親に寄り添い、共感し、認めてあげることでイライラを安らげることができるかもしれません。本人や家族だけで無理に解決しようとせず、助産師や医師に相談し、専門的な助言をもらうのもよいでしょう」
(ライフスタイルチーム)
福山千代子(ふくやま・ちよこ)
アヴェニューウィメンズクリニック院長
日本産科婦人科学会専門医。金沢医科大学卒業。東京大学医学部付属病院、茨城県立中央病院で研修後、複数の病院で経験を積み、2009年11月より現職。クリニックは医師をはじめ全て女性スタッフで構成されており、クリニックオリジナルのホルモン補充療法での更年期治療をはじめ、膣レーザー「モナリザタッチ」をいち早く導入するなど、新しい治療にも積極的に取り組んでいる。月経痛や月経前症候群(PMS)、更年期障害など女性ホルモンの影響によるさまざまな不調や悩みを抱える女性の、生き生きとした生活を応援している。アヴェニューウィメンズクリニック(https://www.aw-clinic.com)。