2017年、警察が児童相談所に通告した虐待や虐待疑いの子供の数は65,000人超で、過去最悪。
社会的に認知されて通報が増えているとはいえ、子育ての悩みは昔からあったはずなのに、なぜ今これほど増加しているのでしょうか。
虐待を無くすため、根本から考えて必要な「夫婦の〇〇」とは?
核家族化が進んでできた、世代間の壁
虐待や発達障害などで、親と一緒に住めない子供たちが多く暮らす児童養護施設。
施設の子供たちをたくさん見ている児童養護施設・新日本学園・統括園長 鈴木寛氏の話によると、「核家族化が進んで、親とその親の世代に壁ができ、子供部屋が用意されて物理的な壁ができ、それが本当の壁になった。
さらに、信用できない社会での子育てだから、親が不安を抱えている」といいます。
祖父母に頼れず、密閉空間での孤独なワンオペ育児。常に何か不安な状態で子育てしていたら、そのひずみがいつか子供に向かい虐待に繋がってしまうのでは?と想像できます。
しかし、何の罪もない子供を傷つけていいはずがありません。
「1 +1 =1」を導くための「夫婦の話し合い」
核家族が当たり前になった今、家庭や夫婦の考え方や在り方は、一体どうすべきでしょうか。
家族は社会や文化の基本単位だと話す鈴木氏は、「家庭がどうあるべきか、スタンスが揺れ動いている。そこまで夫婦で話し合っていますか? どんな子供になってほしいか、どんな大人になってほしいか、どんな親になってほしいか、そこの議論が夫婦で詰まっていない。だから悩む」と、語気を強めます。
しかし、夫婦の話し合いができていなくても、親の姿をそれぞれ子供たちに見せ、各得意分野に応じて教えたり、見せたり、連れて行くという考え方ではだめだろうか。
「同棲の場合は“1+1=2”で良かったが、結婚の場合は“1+1=1”でなければならない。家庭としての結論は1つ。お父さん、お母さんがそれぞれの姿を見せて子供が選ぶというのは、子供が困ってしまう」と、筆者の浅はかな考えはばっさり切り捨てられた。
長年、支援が必要な子供たちの家庭を見てきた鈴木氏の考えに、私たちは家族の中においてもあまりにも「個」を尊重し過ぎてしまっているのではないか、と気付かされます。
まずどういう家庭にしていきたいのか、どんな子供になってほしいか、しっかりと夫婦二人で話し合い、1つの答えを出して家庭の「軸」を決めるべき——
話し合いができていないからといって必ず虐待に繋がるとは限りませんが、きちんと地固めができていた方が、子供も親も安心して過ごせます。
その安心が、虐待を招きにくくするのでしょう。
※こちらの記事は2018年2月17日に行われた「現代の子育てと子供の置かれている状況」の鈴木寛氏の講演の内容を元に構成した記事になります。
<参考>
厚生労働省、朝日デジタル、Nippon.com
<出典>
JIJI.COM
7歳男児、3歳女児、44歳夫と4人家族で、育児・家事に翻弄される毎日。13年勤めた会社を退職後、現在は月刊誌の取材・執筆・撮影に携わる。一方で子供に関わる社会問題にも関心を寄せる。好きな食べ物はマカロン。