家事をする女性に多い「主婦湿疹」、どうしたら治せる? 予防には手袋?

投稿日:2022-06-27 更新日:

一度発症すると治りにくいといわれる「主婦湿疹」を治療する方法はあるのでしょうか。皮膚科医に聞きました。

「主婦湿疹」を治すには?

 

水仕事などの家事をする機会が多い女性が悩むのが「主婦湿疹」と呼ばれる手の湿疹です。特に、空気が乾燥する秋から冬にかけて、症状が悪化しやすいともいわれており、夜に眠れないほどのかゆみに襲われることもあるようです。ただ、病院で診療を受けても「(治すには)家事をやめるように」と言われたり、処方薬が効きにくかったりするなど対処が難しい病気として知られています。

ネット上では「永遠に治らないのかな」「10年以上悩まされている」「家事はやめられない」など悲痛な声が寄せられていますが、主婦湿疹を治す方法はあるのでしょうか。アヴェニュー六本木クリニックの皮膚科医・太田理会さんに聞きました。

頻繁な手洗いや消毒で

Q.「主婦湿疹」の原因や主な症状を教えてください。また、女性だけでなく男性や子どもが発症することもあるのでしょうか。

太田さん「主婦湿疹(主婦手湿疹)は接触皮膚炎の中で『刺激性接触皮膚炎』に分類、もしくは皮疹(皮膚に出る発疹)の形態によっては『進行性指掌(ししょう)角皮症』というものに分類される湿疹です。

これは手洗いや消毒、洗剤の使用などで皮膚に何らかの刺激が繰り返し与えられることで、皮膚のバリアー機能が低下し、皮膚が傷ついて炎症を起こすものです。特に家事をする女性に多く見られますが、日常生活や仕事で手洗いや消毒を頻繁にしたり、洗剤などをよく使用したりする人は男女・年齢にかかわらず発症しやすいです」

Q.主婦湿疹は肌が乾燥しやすい冬に症状が悪化しやすいのでしょうか。

太田さん「確かに、冬はお湯を使う機会が増えるため皮膚に負担がかかり、また、皮膚自体が乾燥するため悪化しやすいです。ただし、継続的に皮膚に刺激を与えることで発症するため、年間を通して起こり得ます」

Q.主婦湿疹とみられる症状が出た場合、どのように対処すればいいのでしょうか。家事を一時的にやめた方がいいのでしょうか。

太田さん「繰り返し湿疹が出る、あるいは症状の悪化が認められる場合は皮膚科への通院をおすすめします。医師が診察して、他の病気や原因がないかも含めて判断します。もし、主婦湿疹と診断された場合、外用薬や内服薬の処方のほか、保湿剤によるケアや手をできるだけ使わないこと、手袋の使用などの生活指導を受けるかと思います。

しかし、主婦湿疹は治りにくく、湿疹を繰り返してしまうことがあります。その結果、症状が悪化する恐れがあります。皮膚のバリアー機能が低下し、皮膚が傷ついて炎症を起こしてしまうこと自体が一番の問題ですから、家事などをしないようにすれば、一時的な改善は見込めるかも知れません。しかし、家事を再開すれば発症する可能性もあり、あまり現実的ではありません」

Q.では、家事を続けながら治療するにはどうしたらいいのでしょうか。

太田さん「主婦湿疹を悪化させず、また、家事と両立するために私はいつも患者さんに次のことをお願いしています。

【手を使ったり洗ったりするたびにしっかり保湿剤を塗り、皮膚のバリアー機能を保つこと】

『ベタベタする』『手触りが悪い』『他の場所や誰かに保湿剤がついてしまうのが心配』と相談してくる人がいますが、時と場合に応じて保湿剤の種類を変えたり、塗り方を工夫したりするよう説明しています。保湿の方法やケアの回数を変えるだけで改善することもあります。

【湿疹が悪化したときはその都度、早めに治療すること】

『処方された薬が合わない』『効果がない』『使用するのが心配』『長期的に使って大丈夫?』などと感じた場合は、早めに医師に相談することが大切です。中には、不安になって自己流の薬の使い方をしたり、使用をやめてしまったり、いろいろな皮膚科を受診して多くの薬をもらい、どうすればいいのか分からなくなる人もいますが、症状を悪化させるだけです。

主婦湿疹は手を使う限り、繰り返し起こり得るもので、放置すると悪化し、全身に湿疹が出る『自家感作性皮膚炎』などを発症する恐れがあります。困ったときや疑問に思ったときは皮膚科医に相談し、自分に合った治療やケアをしてください。皮膚科では、実際に処方される外用薬を塗り、塗り方やコツ、頻度、量、注意点などを知る外用指導を受けることができます。これにより、普段のケアが合っているかどうかの確認やケアに関する疑問を解決できます。

【日頃から使用している洗剤やせっけん、化粧品、薬剤、またはよく触れている物やよく使用する物で悪化している可能性も】

これらの製品が原因で悪化している場合、低刺激の製品や香料などの成分が入っていない製品、皮膚に優しい製品などへの変更をお願いすることもあります。また、使用中の製品がきっかけで、かぶれ(アレルギー性接触皮膚炎)を起こして悪化している場合もあります。その可能性が考えられる場合、アレルギー検査、パッチテストなどをすすめることがあります。原因物質が分かれば、それらが入っていない製品を選んで使用するようお願いしています。

以上ですが、患者さんによって生活習慣や手を使う頻度も違うため、人により、ケアや治療方法も違ってくる場合があります。通院先の皮膚科医に必ず相談してください」

Q.主婦湿疹を予防するのに手袋は有効なのでしょうか。それとも、逆効果なのでしょうか。

太田さん「手袋は水仕事を行うときは特に使用をおすすめします。もちろん、家事以外のときもぜひ使用してください。手袋で皮膚を保護することで症状の悪化を防いだり、かぶれが起こるリスクを防いだりすることができます。ただし、手袋自体で悪化してしまうこともあり、注意が必要です。特に長時間の使用は気を付けてください。

皮膚を保護するために手袋を使用する場合はコットン(綿布)手袋の上から装着することをすすめます。その場合、事前に保湿剤を塗るとよいでしょう。また、まれにゴム製品でかぶれてしまう人もいるので、この場合も皮膚科医に相談し、必要があれば検査したり、使用可能な製品を相談したりしてください」

コロナ禍でさらに増加?

Q.コロナ禍で主婦湿疹に悩む人が増えたという話を聞きますが、実際にそのような傾向はあるのでしょうか。

太田さん「やはり、新型コロナウイルスの影響で、手洗いや消毒、掃除などで主婦湿疹を発症する人が増えています。また、主婦だけではなく、老若男女問わず、さまざまな人が発症するケースが増えています」

Q.主婦湿疹の人が手をうまく消毒する方法はあるのでしょうか。また、公共施設で消毒液の使用を要請されたときはどのように対処すればいいのでしょうか。

太田さん「繰り返し申し上げますが、主婦湿疹は皮膚に継続的に刺激を与えることで皮膚のバリアー機能が低下し、炎症を起こすことで発症します。湿疹がある状態でアルコール消毒を繰り返すと症状が悪化する恐れがあるため、状況に応じて消毒と手洗いを使い分けること、その都度、保湿ケアをしっかりして悪化しないように対策することが基本になります。

ただし、アルコールそのものにアレルギーがある場合は、今後のために他の消毒薬などの使用や対策について皮膚科医と相談しておくのも大切です。公共施設などでアルコール消毒を要請された場合は、現状を説明し、基本的には手洗いをして対策すればよいと思います。面倒ではありますが、事前に利用施設の対応を確認しておくのも手かもしれません」

Q.主婦湿疹と似た病気はあるのでしょうか。

太田さん「『汗疱(かんぽう)』や水虫などの病気と症状が似ています。また、まれですが、皮膚の一部が銀白色になって剥がれ落ちる『乾癬(かんせん)』などと診断されるケースもあります。適切に治療するためにも、まずは皮膚科で診察を受けてください」

(オトナンサー編集部)

 

太田理会(おおた・りえ)
医師(皮膚科)

アヴェニュー六本木クリニック勤務。藤田保健衛生大学医学部卒業。藤田保健衛生大学 坂文種報徳会病院、福井県済生会病院で研鑚(けんさん)を積み現在に至る。藤田保健衛生大学病院皮膚科学助手、福井県済生会病院皮膚科非常勤医師、日本医師会認定産業医、日本皮膚科学会正会員、日本美容皮膚科学会会員。アヴェニュー六本木クリニック(https://www.a6-clinic.com)。

 

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