「テレワーク」は日本人を幸せにするのか、しないのか

投稿日:2021-04-04 更新日:

就活や転職、企業人事などのさまざまな話題について、企業の採用・人事担当として2万人超の面接をしてきた筆者が解説します。
都心で働くモチベーション、無視できる?
 テレワークの普及も影響して、東京都から他地域への転出超過が続いています。新型コロナウイルスの感染対策として「3密」を避けるためには、確かに効果的かもしれませんが、一方で、テレワークのデメリットも語られ始め、都心で働くことのモチベーションを無視してよいものかも気になります。ポストコロナ時代の働き方や会社の選び方を考えてみます。

テレワークは孤独感をもたらす

実は筆者もそうなのですが、これだけ長い間、テレワーク中心の生活が続くと、それに飽きてきたという人が増えてきているように思います。10都府県で続く緊急事態宣言においても「通勤はなるべく減らそう」という要請がありましたが、それほど効果はなく、いつもと同じ満員電車だという報道も幾つかありました。

これは既に「テレワークができる人はずっと、テレワークをしているので変化がない」ということかもしれませんが、もう一つの要因として、感染症対策に慣れてきたこととテレワークへの飽き、もっと言うなら、テレワークがつらくなってきたということがあるのではないかと思います。

というのも、テレワークは確かに、ネットを通じて、いろいろな人とやりとりをしながら仕事を行うものの、交換するのは情報やデータばかりで「非言語的な情報」がどうしても減ってしまい、感情的な触れ合いがあまりありません。

そうなると、ロボットを相手に受け答えをしているようなもので、ふと気付くと「そういえば、実際の人間には、もう3日間も会っていないなあ」と孤独感に襲われることがあります。「孤独が楽しい」という人も中にはいますが、日本人は心配性の遺伝子(S型不安遺伝子)を持っている割合が世界一ということもあり、多くの人は不安を感じているのではないでしょうか。

孤独化している日本人

もともと、孤独は心疾患リスクを上げたり、アルツハイマー病になる確率が上がったりと心身の健康を損ねるという研究結果があります。そんな中で、日本人は男性の4人に1人が50歳で結婚経験なし(2015年国勢調査)というように、生涯独身率が高まっており、2025年には単身世帯が1996万世帯(6人に1人強、2015年比8.4%増)になると国立社会保障・人口問題研究所が推計するなど1人暮らしが増えていくという状態です。そんな状態でテレワークをすると、家族もそばにいるわけではなく、本当に独りぼっちになってしまいます。

そういう背景がありながらも、テレワークが仕事を進めるという意味においては表面的に順調にできている企業では、都心のオフィスを縮小する動きも出ています。コロナ禍での壮大な社会的テレワーク実験が一応の「成功」(事業継続できている)を見せていることもあり、多くの経営者が「これでいけるなら、オフィスの家賃がいらないし、交通費もかからないからいいじゃないか」と考えているのです。

しかし、中長期的に見ると、ここまで述べてきたような「孤独」の問題から、必ずしもテレワークを好む人ばかりになるとはいえないでしょう。

そう考えると、一定の会社が撤退することで賃料が安くなる可能性のある都心のオフィスに逆張りで入居することで、居場所がなくなりつつある「集まるのが好きな人」を受け入れる会社も出てくるのではないかと筆者は想像しています。

もともと、都心で働いていた人々の中には、無理やり都心で働かされていたわけではなく、「都心で働くことに憧れて上京した」という人もいるわけです。どちらがよい悪いというよりは単なる好みの問題ともいえるでしょう。しかし、就職活動や転職活動をする際、今後、この新たな「選社軸」は一つの重要な観点になってくるかもしれません。

(人材研究所代表 曽和利光)


曽和利光(そわ・としみつ)
人材研究所代表
1971年、愛知県豊田市出身。灘高校を経て1990年、京都大学教育学部に入学し、1995年に同学部教育心理学科を卒業。リクルートで人事採用部門を担当し、最終的にはゼネラルマネジャーとして活動した後、オープンハウス、ライフネット生命保険など多様な業界で人事を担当。「組織」「人事」と「心理学」をクロスさせた独特の手法を特徴としている。2011年、「人材研究所」を設立し、代表取締役社長に就任。企業の人事部(採用する側)への指南を行うと同時に、これまで2万人を超える就職希望者の面接を行った経験から、新卒および中途採用の就職活動者(採用される側)への活動指南を各種メディアのコラムなどで展開している。著書に「組織論と行動科学から見た 人と組織のマネジメントバイアス」(共著、ソシム)など。

 

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