副交感神経優位にして体を守る
Q.人はなぜ、ため息をしてしまうのでしょうか。
宮島さん「ため息で、息をゆっくり深く吐き出すと、緊張状態が解消され、血液循環が良くなり、体や神経をリラックスさせられるからです。
自律神経は、交感神経と副交感神経という2つの神経からできています。交感神経は、昼間や、緊張状態、ストレスを受けた状態にあるときに優位に働きます。副交感神経は、夜間や睡眠中など休息状態やリラックス状態のときに優位になります。
ストレスの多い現代では、どうしても交感神経優位の状態が続いてしまいがちです。交感神経優位の状態が長引くと自然にため息が出て、副交感神経優位にして体を守ってくれます。ため息は、体にとって必要な防御反応ともいえます」
Q.ため息は体に良い、ということでしょうか。
宮島さん「ため息には、空気を吸い込む『吸気』を促進させ、大脳の表面の大脳皮質を活性化させる働きもあります。また、肺の内部では『肺胞』という小さな空気の袋が酸素を取り込み、体内の二酸化炭素と交換しています。ため息は、しぼんでしまった肺胞を再び膨らませてくれます。こうした意味でも体に良いのです」
Q.逆に、ため息が体に悪影響を及ぼすことはあるのですか。
宮島さん「たとえばパニック障害では、ため息を多くつき過ぎ、大脳皮質が過剰に刺激され、不眠などの問題につながっているとの可能性が指摘されています。ため息が多過ぎることは、体に悪影響があると思われます」
Q.体に良い面があるとはいえ、ため息はネガティブに見られがちです。
宮島さん「ため息するのを見た人の中には、ため息をした人が自分に対して何か不満を持っていると思い、関係性が悪くなるケースもあります。人前でのため息にはご用心です。人のいないところやトイレのパーソナルスペースなど他人を気にしないでよいところがお勧めです」
Q.ストレス解消などに、ため息と同等の効果がある方法があれば教えてください。
宮島さん「太極拳やヨガ、瞑想(めいそう)などの呼吸法も、リラックス効果や副交感神経優位の状態をもたらすとの報告があります。スポーツジムやボクシングジムでサンドバッグなどを叩くのも、交感神経の緊張を解放し、副交感神経優位にして体の血流も良くなり、ため息と同等の効果が得られます。
実際に声に出して、言い捨てるのも、“心のごみ出し”に効果ありです。こちらも、人のいないところがよいと思います。声に出せないところでは、鬱憤(うっぷん)や満たされない思いを紙に書き出してシュレッダーにかけるか、ビリビリに破いてごみ箱に捨てると効果的です」
(オトナンサー編集部)
宮島賢也(みやじま・けんや)
YSこころのクリニック院長、精神科医、精神保健指定医、産業医
防衛医大卒業後、研修医時代にうつ病の診断を受ける。紆余曲折を経て精神科医に。受診が終了しても再発する患者が多いことから、薬ではうつは治らないと感じて医者以外の方から学び、食事や考え方、コミュニケーションを変え、うつを克服する。「薬を使わない精神科医」と名乗り、成功哲学ベースの手法を発信。湯島清水坂クリニックで安保徹氏、福田稔氏の自律神経免疫療法で体の血行改善、温めの有効性を知り、生き方直しと一緒に提供して効果を実感。その後、YSメソッドに出会い、YSこころのクリニックでYSメソッドの治療を提供。単なるうつヌケだけでなく、本当の自分に出会い、愛と感謝と喜びの中に今日も生きる。著書に「薬を使わない精神科医の『うつ』が消えるノート」(青春出版社)、「自分の『うつ』を治した精神科医の方法」(河出書房新社)ほか多数。