なぜ乱れる? ホルモンバランスを整えるために知っておきたいこと

投稿日:2020-10-11 更新日:

心と体を健康に保つには、適量のホルモンが正常に分泌されていることが大切です。ここでは、ホルモンバランスが乱れる原因とバランスを整える方法を解説します。

 

ホルモンバランスが乱れるとどうなる?

言葉を知っていても、実態の分からない「ホルモン」。その具体的な重要性について知っている人は、それほど多くないかもしれません。ここでは、ホルモンバランスが乱れる原因とホルモンバランスを整える方法について、医師の尾西芳子さんに聞きます。

ホルモンバランスが乱れる原因

心と体を健康に保つには、適量のホルモンが正常に分泌されていることが大切です。ホルモンにはさまざまな種類と役割があり、その数は70種類以上。どれも欠かせない存在ですが、非常に繊細なコントロールで分泌されているため、すぐに分泌バランスが乱れてしまいます。

ホルモンバランスが乱れる原因として、「睡眠不足」「ストレス」「食生活の乱れ」「運動不足」が挙げられます。生活習慣が不規則であること、ストレスが多いことはホルモンバランスが乱れる最大の原因です。ホルモンの分泌は自律神経(交感神経と副交感神経)が密接に関係していますが、自律神経は不規則な生活によって乱れてしまいます。各種のホルモンと自律神経は同じ脳の視床下部で調節しているため、自律神経失調症とホルモンバランスの乱れは同時に起きやすいのです。

また、男性よりも女性の方がホルモンバランスが乱れやすいのは、「性ホルモン」が関係しているからです。

ホルモンは通常、体を常に安定させるために適正分泌されていますが、そもそも、不規則な生活とストレスは体にとって異常事態です。そのため、ストレスが体に加わるとストレスに対抗するためのホルモンが大量に分泌されます。それが、「コルチゾール」という副腎皮質ホルモンです。コルチゾールは普段から分泌されているホルモンではありますが、ストレスに対抗するために、一時的に大量に分泌され、ストレスから体を守っています。

ところが、ストレスが慢性的に続くとホルモン分泌を頑張りすぎた副腎は疲れてしまい、ホルモンの分泌量が急減します。こうなると、ささいなストレスにも対応できなくなり、体は常に疲労状態になります。肉体的な疲労のみならず、精神的な健康も保てなくなってしまうのです。

女性がホルモンバランスを崩しやすい理由

70種類以上存在するホルモンですが、それらは大きく2つに分類できます。一つは、アミノ酸を原料とする「甲状腺ホルモン」「アドレナリン」などのホルモン。もう一つは、コレステロールを原料とする非たんぱく質ホルモンで、睾丸(こうがん)・卵巣・副腎皮質から分泌される「性ホルモン」です。性ホルモンには、男性ホルモンと女性ホルモンがあります。

男性ホルモンと女性ホルモンは、男女ともにその両方を体内で分泌しています。分泌の割合が異なるだけで、どちらか片方だけを分泌しているわけではありません。では、なぜ女性の方がホルモンバランスを崩しやすいのでしょうか。

女性ホルモンには「エストロゲン」「プロゲステロン」の2種類があり、これら微量のホルモンが月経のタイミングで波のように変動しています。女性は思春期から更年期まで、月経や妊娠、出産、閉経と目まぐるしく女性ホルモンの分泌が変動し、安定期は20~40代と比較的短いのが特徴です。一方、男性は生涯を通じて男性ホルモンの変動が緩やかです。

女性はホルモン分泌量の変化が激しいため、男性よりもホルモンバランスの乱れを招きやすいのです。

女性ホルモンが乱れるとどうなる?

女性ホルモンの働きによって、女性特有の丸みのある体の形成や、月経・妊娠のコントロール、自律神経の安定、記憶力の維持、食欲の抑制のほか、肌や髪が美しく保たれたり、骨が丈夫になったりします。このため、女性ホルモンが乱れていると以下のような症状が現れます。

・冷え
・むくみ
・便秘
・下痢
・イライラ
・気分の落ち込み
・肌荒れ
・肩こり
・頭痛
・腰痛
・倦怠(けんたい)感

少しバランスが崩れた程度であれば、どことなく不調を感じる「不定愁訴(ふていしゅうそ)」で済みます。毎月、エストロゲンとプロゲステロンの分泌量が大きく変動するので、何気ないことでイライラしたり、さまざまな症状が出たりするのも無理はありません。

前述の通り、ホルモンバランスの乱れは男女問わず、不規則な生活とストレスが引き金となって起きます。ストレスは悪い意味で捉えられがちですが、ポジティブなことも含めて、「いつもと違う状況」でもストレスになります。たとえば「待ち遠しくてソワソワしていた旅行中、来るはずの生理が来なかった」「仕事で責任あるプロジェクトを任されて充実している半面、生理周期が乱れがち」などがこれに当たります。

特に女性は、家庭に仕事、プライベートと手抜きができない環境が多いほか、ダイエットも女性ホルモンの分泌に強い影響を与えます。当然、睡眠や運動不足もホルモンバランスの大敵。特に、以下の項目に当てはまる人は要注意です。

【睡眠不足の人】
・コーヒーや紅茶が好き
・寝起きが悪い
・就寝前にスマートフォンを触っている
・昼と夜が逆転しがち

【ストレス過多の人】
・常に仕事のことが気になる
・人間関係の悩みがある
・趣味と呼べるものがない

【食生活が乱れている人】
・朝ご飯を食べない
・お菓子や揚げ物が大好き
・午後9時以降に夕飯を食べる
・お酒が大好き

【運動不足の人】
・運動が苦手
・階段は使わない
・すぐに息切れする

ホルモンバランスを整える対処法

ホルモンバランスは一度崩れてしまうとすぐには元に戻りませんし、薬を飲めば治るという単純なものでもありません。長年の生活習慣を見直すなど、原因別に対処して早めにバランスを整え、健康的な体に戻す必要があります。

【対処1:睡眠不足】
睡眠中に分泌されるホルモンには、疲労回復を促す成長ホルモン、睡眠そのものに関わるメラトニンなどがあります。このため、睡眠時間の確保はホルモンバランスを整えるための重要なポイントです。

休日に寝だめしようとしても意味がありません。遅く寝てもなるべく早起きをして、起きる時間を一定に保つことが大切です。また、ホルモン分泌は午後10時~午前2時に活発になるので、その時間はパジャマなどに着替えてリラックスし、直前までテレビやスマホを見ることは避けて自然と眠りに入れるように準備してください。

【対処2:ストレス】
やらなければならないことを決めつけず、ゆったりとした時間が作れるとベストです。仕事をしている人にとっては、仕方ないこととはいえ、常に何かに急かされた生活はストレスの原因になります。没頭できる趣味を見つけたり、入浴は必ず湯船に浸かったり、アロマオイルをたいたり、好きな音楽を流したりして、気持ちをリラックスモードに切り替えることが大切です。

【対処3:食生活】
「太るのが嫌だから」と、肉や脂を過剰に避けた食生活をしていませんか。ホルモンの材料はアミノ酸(タンパク質)とコレステロールです。極端なダイエットはストレスにもつながるため、さらに悪循環を招きます。女性が積極的に摂取した方がよい食材は以下の通りです。

・イソフラボン(納豆、豆腐などの大豆製品)=女性ホルモンと同じような働きをする
・ビタミンE(カボチャ、アボカド、うなぎ)=女性ホルモンの分泌を促す
・ビタミンB6(レバー、マグロ、カツオ、ナッツ類)=女性ホルモンの分泌を促す
・カルシウム(乳製品、小魚、ゴマ、ひじき)=自律神経の働きを助ける

特にお勧めするのはイソフラボンです。アレルギーがなければ毎日摂取しても構いません。イソフラボンの摂取目安量は1日40ミリグラム以上ですが、納豆なら1パック50グラム中に35ミリグラムが含まれており、手軽に摂取できます。偏った食事は避け、さまざまな食材を摂取するように心がけることが大切です。

【対処4:運動不足】
無理に激しい運動をしてしまうと逆にストレスになりかねません。一方、適度な運動はストレス解消になるため、運動が楽しいと思える程度から始めましょう。運動が苦手な方は、階段の上り下りから始めるのもよいでしょう。ベッドでストレッチをしたり、歯磨きをしながらつま先立ちをしたりするなど、ちょっとした運動を毎日続けるのがコツです。早起きできる環境であれば、全身運動になるラジオ体操がお勧めです。

 

心当たりがある場合は生活習慣の見直しを

「ホルモンは、体の中で欠かせない働きをします。その分泌と密接な関係を持つ自律神経が乱れれば、ホルモンバランスは簡単に狂ってしまいます。女性が一生涯で体内生産する女性ホルモンは、具体的な量にするとティースプーン1杯程度。たったそれだけで、生涯を通じて日常生活に影響するほどの作用があります。ホルモンバランスの乱れに心当たりがある方は、体からの警告を無視せず、きちんと生活習慣を見直しましょう」(尾西さん)

(ライフスタイルチーム)

 


ライター:尾西芳子(おにし・よしこ)
産婦人科医(日本産科婦人科学会会員、日本女性医学学会会員、日本産婦人科乳腺学会会員)

2005年神戸大学国際文化学部卒業、山口大学医学部学士編入学。2009年山口大学医学部卒業。東京慈恵会医科大学附属病院研修医、日本赤十字社医療センター産婦人科、済生会中津病院産婦人科などを経て、現在は高輪台レディースクリニック副医院長。「どんな小さな不調でも相談に来てほしい」と、女性のすべての悩みに答えられるかかりつけ医を目指している。産科・婦人科医の立場から、働く女性や管理職の男性に向けた企業研修を行っているほか、モデル経験があり、美と健康に関する知識も豊富。オフィシャルブログ(http://ameblo.jp/yoshiko-onishi/)。

 

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