やけどの処置は最初が肝心! やけどをした時の応急処置はどうする?

投稿日:2023-03-15 更新日:

「やけど」は日常生活で多いケガの一つ。症状や処置によっては後遺症が残る場合もあるので注意が必要です。ここでは、やけどの種類や応急処置法などを解説します。

やけどの種類や応急処置の方法は?

熱湯や油による「やけど」は身近に起こるケガの一つです。やけどの損傷度合いが皮膚の深いところまで及ぶ場合には、後々まで損傷部の痕が残りやすいですが、皮膚表面だけのやけどであれば、対処法さえ間違えなければ痕は残りにくくなります。やけどについて正しく知り、日頃から応急処置法を頭の隅に置いておくと、やけどの症状を最小限に食い止められることができます。

ここでは、やけどの特徴や応急処置法について、医師の髙田女里さんに聞きます。

やけどの種類

「やけど」という言葉の発祥は「やけたところ」であり、変化しながら現在の「やけど」に定着したとされます。医学用語では「熱傷(ねっしょう)」であり、熱い液体や水蒸気、化学薬品などによって皮膚が損傷されることを指します。

軽いやけどであれば、自然治癒することが多いため問題ありませんが、気道など粘膜のやけどの場合は窒息に至ったり、範囲や深さが重度の場合は合併症を起こしたりするなど、命に関わる段階まで進行してしまいます。

やけどの主な種類は次の通りです。

【温熱熱傷】
火や熱湯、蒸気などによって、口や気道などの粘膜や皮膚表面が損傷することです。低温やけどや、気道熱傷(気管・気管支・肺のやけど。災害時に起こることが多い)もこの部類に属します。

【化学熱傷】
強い酸性やアルカリ性の薬品などに接触することで至るやけどです。温熱熱傷に比べて深部までの損傷が多く、感覚障害が出るケースもあります。

【電撃傷】
落雷や感電などで体内に電流が流れ、人体の抵抗から発生する熱によるやけどです。水分が付着した皮膚は感電しやすいため注意が必要です。また、女性は男性と比較し、2/3の弱い電流で感電すると言われています。

【放射線熱傷】
放射線を体内に照射させることで熱が生じ、やけどのような症状に至るものです。

損傷の深さによる分類

やけどの分類は、皮膚の構造である「表皮」「真皮浅層」「真皮深層」のうち、どの深さまで損傷されているかによって決まります。

【I度熱傷】
皮膚の表面である表皮は角質層、顆粒層(かりゅうそう)、有棘層(ゆうきょくそう)、基底層に分かれますが、このうち角質層でとどまるやけどです。日焼けもやけどの一つであり、ここに位置付けられます。

ヒリヒリした痛みを伴い、皮膚が赤くなりますが、軽症なので特別な処置をしなくても数日で治癒します。対処法を間違えなければ痕はほとんど残りませんが、場合によっては痕が残ることもあります。

【浅達性II度熱傷】
皮膚の表皮のやけどですが、有棘層から基底層に及ぶ損傷です。皮膚の表面は腫れや水ぶくれなどを生じ、痛みも強くなります。何らかの処置を必要とし、1~2週間程度で治癒しますが、痕が残ることもあります。

【深達性II熱傷】
皮膚の真皮にまで至るやけどです。皮膚は、腫れや水ぶくれを生じますが、浅達性II度よりも深部に至る損傷のため、痛みを伴わないこともあります。処置が必要となり、治癒までに2週間以上を要するケースも多く、痕が残ってしまいます。

【III度熱傷】
皮膚の真皮から皮下組織までの損傷が見られます。神経も死滅してしまうため、痛みを感じることもなく、部位によっては機能障害を伴う場合もあります。III度熱傷の場合は、すぐに病院に搬送され、手術を行うのが一般的です(超高齢の場合や全身状態が特別悪化している場合を除く)。状態によりますが、症状が落ち着くまで1カ月以上を要すこともあります。

やけどの応急処置

やけどの応急処置の方法は次の通りです。

【水でしっかり冷やす】
まず必要なのは冷却です。やけどした部位に水道水を当てられる状況であれば、ためた水ではなく流水で10~30分冷やします。環境ややけどの部位、程度によっても違うため、風邪をひいたり低体温になったりするような状況では避けるように配慮しましょう。

流水で冷やせない場合、冷たいタオルを交換しながら患部に当てます。氷を使用する場合は、患部に直接当てずにガーゼや薄いタオルなどの上から当てるようにします。衣類が付着している場合には、無理に脱がさず、衣類の上から冷却してください。

【水ぶくれができた場合は破らない】
水ぶくれができた場合、破らないように注意してください。水ぶくれが破れてしまった場合は、損傷した皮膚ははがさず、そのまま上から清潔なガーゼを当てます。適当な判断で薬などを塗布することは避け、すぐに病院を受診してください。

火や熱湯ではなく化学物質でやけどした場合、まずは水で洗浄してください。ガーゼや布で拭き取ると、患部に化学物質を広げてしまう可能性があります。ただし、生石灰は水と化学反応を起こしてしまうので危険です。できるだけ早く病院を受診してください。

やけどの仕組み

やけどに関わるさまざまな仕組みについてご紹介します。

【水ぶくれはどうしてできる?】
やけどによって皮膚が損傷すると、その部分を治そうとする血液成分が集まってきます。水ぶくれが破れても赤い液体が出ないのは、集まった成分が「血しょう」と呼ばれる、赤血球が含まれていない液体だからです。

【やけどは熱いよりも痛いのはなぜ?】
やけどによって皮膚の真皮の奥まで損傷が広がると、痛みを感じなくなります。痛みは表皮であるほど強くなるものですが、これは、血管が多く走行している皮膚の表面部分を損傷することで血管も損傷し、血流によって運ばれていた酸素が遮断されてしまうことによるもの。「酸素が足りない」状態を、痛みとして脳に伝えているのです。

【低温なのにどうしてやけどする?】
やけどの原因は、高温ばかりではありません。ホットカーペットやカイロ、電気毛布、コタツなど、40度台の温度に持続的に触れることでも起きます。通常、44度で6時間、45度では3時間程度でやけどに至ると言われています。

温かいと感じる低温の物質が皮膚に接触すると、その熱さが、ゆっくりと皮膚の奥まで浸透します。脂肪層は血流が少ないため温度が上がりやすく、深いやけどとなってしまいます。糖尿病や高齢者など、比較的知覚に鈍感になっている人や、動けない乳幼児などに多く見られます。

なお、ドライアイスによる損傷はやけどの一つと考えがちですが、低温やけどではなく「凍傷」です。細胞が死滅するのは同じですが、脳が痛みと熱さを勘違いすることで、やけどと感じてしまうのです。

合併症の危険も

やけどには合併症を引き起こす危険性もあります。

【感染症】
赤くなる程度の、軽く小さなやけどであれば自然治癒しますが、表面に傷がついてジクジクしたり、水疱の皮膚がはがれたりした場合は、皮膚のバリアがない状態であるため、細菌などによる感染が起きる可能性があります。感染すると傷の治りも遅くなり、傷痕や色素沈着が起きる場合があります。清潔に保つこと、刺激しないことが重要です。

【ケロイド】
やけどがひどくなると、コラーゲンの作用によって傷痕がミミズ腫れのようになることがあります。これが「ケロイド」です。ケロイドは、真皮の3分の2以上のやけどに際して形成されるもので、やけどによって皮膚の緊急事態を悟った細胞が整復を行う際、コラーゲンを過剰に作り出すことで生じるとされています。

ケロイドができるかどうかは、主に体質によるものと言われていますが、正確な原因はわかっていません。また、ケロイドができやすい部位とできにくい部位があることがわかっています。

やけどのケア方法

それでは、やけどの痕をケアする方法はどのようなものでしょうか。

【やけどによって薬を使い分ける】
やけどの傷口が広い、もしくは深い場合、必ず医師の診断と治療が必要となりますが、程度が軽い場合や、応急処置によって痛みも軽減したということであれば、市販の薬剤で処置しようとするでしょう。

やけどの薬はさまざまな種類がありますが、初療はステロイドが有効です。炎症を鎮め、痛みも除去してくれる働きがあります。ただし、感染の危険性が増すため、ステロイドを長期間使用しないでください。症状がある程度落ち着いたら、抗生物質を含んだ塗り薬を使用しましょう。刺激が弱く、細菌による感染などを防止してくれます。

【やけどに効果的な食事を取る】
やけどが広範囲に及ぶと、患部からは浸出液の量が多くなります。重症になると水分が多く流れ出てしまい、脱水を起こしたり、タンパク質が不足したりしてしまいます。

(1)良質なタンパク質
病気やケガの有無にかかわらず、必要な3大栄養素の一つです。卵や牛乳、大豆製品、魚に含まれます。やけどによるダメージの回復には、特にタンパク質が必要です。

(2)ビタミンB群
やけどによって生じた傷の悪化を防ぎます。ビタミンB2は卵や納豆、レバー、ビタミンB6は赤ピーマンやバナナ、大豆製品、ビタミンB12はシジミ、ハマグリ、のりなどに含まれます。

(3)ビタミンA
ビタミンAの不足に伴って、粘膜や皮膚が弱くなってしまいます。レバーやニンジン、ホウレンソウ、カボチャ、牛乳、小魚などを取るようにします。

(4)亜鉛
やけどによって壊された細胞を再び作り出すのが亜鉛です。カキやアサリ、牛肉、アーモンド、大豆製品などに含まれます。

(5)ビタミンC
やけどをすると、細胞だけでなくコラーゲンも失います。コラーゲンを作り出すのに必要なのがビタミンCです。キウイフルーツやかんきつ類、ピーマン、ブロッコリー、ホウレンソウなどに含まれ、色素沈着を防ぐ効果もあります。

放置しないことが大切

「やけどは基本的に、どんな小さなものでも放置してはいけません。適当に消毒したり、軟膏(なんこう)をつけたりすると、傷をさらに深く、また広範囲に広げてしまうことになる上、治りを遅くしてしまうことにもつながります。

傷口に感染症が起きると、そこから違う病気に進行することもあります。特に、糖尿病を持った方や高齢の方は、免疫力が弱いので傷の治りが遅く、完全に治癒するまでに時間がかかり、その部分が悪化するスピードも速くなってしまいます。やけどをしてしまった、あるいは誰かのやけどをケアする時は、安易に自己判断で取り扱うのではなく、なるべく早く病院に行き、医師に診察してもらいましょう」(髙田さん)

(ライフスタイルチーム)

髙田女里(たかだ・めり)
医師(形成外科)・医学博士(法医学)

1980年8月15日生まれ。慶応義塾大学法学部法律学科の憲法ゼミで学んだ後、医師を目指して秋田大学医学部へ学士編入。医師免許取得後、2年間研修医として各科を回り、その後、法医学分野の博士号を取得した。日本形成外科学会会員、日本抗加齢医学会会員、日本医師会認定産業医。

 

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