コーヒーの香りや味は好きなのに、飲むと胃痛や頭痛が起こる人がいます。原因を医師に聞きました。
先日、コーヒーが苦手な人と好きな人の違いについて味覚の面から説明する記事を配信したところ、一部の読者から「コーヒーの香りや味は好きだが、飲むと頭痛や吐き気がする」「胃が痛くなり、膨満感が続く」「下痢になる」「逆流性食道炎になった」などのコメントを頂きました。そこで、コーヒーが体に与える影響について、総合内科専門医の入谷栄一さんに聞きました。
胃や腸の粘膜を刺激する成分
Q.コーヒーを飲むと吐き気がする、胃が痛くなるという人は、どのような原因や体質が考えられるでしょうか。
入谷さん「コーヒーを飲んで吐き気がする場合、原因は多岐にわたります。一つは、カフェインの作用により胃酸が過剰に分泌され、吐き気を催す場合です。特に空腹時に、胃に消化するものがないのに、胃液が過剰分泌されると気持ち悪くなりがちです。他にはコーヒー豆そのものが劣化している場合もあります。
胃痛については、カフェインが原因と考えられてきました。コーヒーの抽出物にカフェインが含まれますが、カフェインは胃酸の分泌を促進するため、胃粘膜を傷つける可能性があるからです。しかし、最近では、カフェインレスコーヒーでも胃痛を生じるという報告があります。コーヒーの抽出物に含まれる『クロロゲン酸』という物質が原因といわれています。クロロゲン酸が胃酸の分泌を促進し、胃の粘膜を刺激して痛くなると考えられています」
Q.頭痛については。
入谷さん「カフェインは脳の血管を収縮させる作用があるので、一般的には頭痛に有効とされます。しかし、コーヒーを飲むと頭痛がするという人もいます。その場合、『カフェイン離脱頭痛』の可能性があります。カフェインが血管を収縮しても、カフェインの効果が切れると血管が拡張し、これを繰り返すと頭痛がひどくなります」
Q.コーヒーを飲んで下痢になるというのは、どのような原因や体質が考えられるでしょうか。
入谷さん「コーヒーに含まれるタンニンが原因の可能性があります。コーヒー以外のカフェインが含まれているものを飲んでも腹痛や下痢にはならないのに、コーヒーを飲んで下痢になる場合、コーヒーに含まれるタンニンが腸粘膜を刺激してしまい、下痢などを引き起こしている可能性があります」
Q.逆流性食道炎については。
入谷さん「コーヒーそのものが逆流性食道炎を発症させるのではなく、発症する人は元々、食道と胃の境目にある『下部食道括約筋』が緩んで胃液が逆流しやすい状態と思われます。そこに、下部食道括約筋の働きを弱める食べ物や、胃酸を増やして胃酸過多を引き起こす食事や飲み物(コーヒーなど)を取り、さらには胃に負担がかかる姿勢をすることなどが絡み合って症状が出ます」
Q.ネット上には「コーヒーアレルギー」というものがあるとの情報があります。
入谷さん「今まで普通に飲んでいたコーヒーで、突然、頭痛・吐き気・腹痛・下痢などが起こるようになった場合、『コーヒーアレルギー』の可能性もあります。急性カフェイン中毒は、カフェインが体内から排出されれば症状が治まりますが、コーヒーアレルギーは、コーヒーを飲むたびに体に不調が起こります。
食物アレルギーには、『即時型アレルギー』『遅発型アレルギー』の2種類があり、特定の食物を摂取すると、すぐに症状が出るのが『即時型アレルギー』、食物を摂取してしばらくしてから症状が出るのが『遅発型アレルギー』です。毎回コーヒーを飲んでしばらくしてから吐き気・腹痛・下痢などがある場合、コーヒーアレルギーも念頭に入れてみてください。コーヒーアレルギーだと分かった場合は、コーヒーを摂取しないでください」
Q.コーヒーを飲んで体調が悪くなる人は、ミルクや砂糖を入れることで症状が緩和、あるいはなくすことができるのでしょうか。
入谷さん「砂糖やミルクを入れても、コーヒー成分を除去しているわけではないので、コーヒーの摂取は控えるべきです」
Q.逆にコーヒーが体に良い点を教えてください。
入谷さん「肝臓がんと子宮体がんの予防に効果が期待できる、との報告があります。国立がん研究センターによると、肝臓がんを抑える効果があることは『ほぼ確実』、子宮体がんを抑える効果は『可能性あり』です。コーヒーには、ポリフェノールの一種である抗酸化物質のクロロゲン酸が豊富に含まれており、恐らくこの成分ががんを抑制するとされています。
ただ、前述の通り、クロロゲン酸は胃酸の分泌を促進して胃の粘膜を刺激する作用がある他、コーヒーは医薬品ではなくカフェイン中毒の懸念もあるため、飲む量は常識的な範囲内にとどめてください」
(オトナンサー編集部)
入谷栄一(いりたに・えいいち)
医療法人社団勝栄会いりたに内科クリニック理事長・院長
NPO法人日本メディカルハーブ協会理事、総合内科専門医、呼吸器専門医、アレルギー専門医、インフェクションコントロールドクター、産業医。長年、大学病院でがんの臨床研究に携わり、がん患者の約6割がサプリメントなどの補完医療を行っている事実に直面。自身もぜんそく・アレルギーで苦しみ、現代医療に補完医療を取り入れ、人生が大きく変わった経験を持つ。「ハーブを使った自然療法」を通した手法が評価され、日本初のハーブ専門外来を開設した実績を持つ。現在は地域医療や在宅診療に力を入れている。著書に「病気が消える習慣」「キレイをつくるハーブ習慣」(経済界)。