自転車のパンク、7割は防げる? もっと注目したい「空気入れ」の重要性

投稿日:2018-07-30 更新日:

自転車に乗る人の多くが経験したことのあるだろう「パンク」。実はその原因は7割が「空気入れ」で、防止は意外と難しくなさそうです、が、「空気入れの正解」はひと口でいえないのが難しいところ。しかしそれを知っていると、自転車の利用がより便利で快適になるかもしれません。

「空気入れ」はパンクの最大予防策

自転車に乗る人の多くが経験しているだろう、タイヤのパンクトラブル。通勤、通学時など急いでいるときは特に精神的ダメージを受けますし、車道走行中に起こると、大事故すら誘因しかねない非常に危険なものです。

しかしながらこのパンク、日々の簡単なメンテナンスでその多くを防ぐことができます。一般的な自転車は、タイヤ内部にチューブが入った「クリンチャー式タイヤ」が主流ですが、これに関しブリヂストンサイクルのデータによると、パンクの実に7割は「空気圧の低下」が原因とのこと。つまり空気入れをこまめに行い、空気圧を常に適切な状態にしておくだけで、パンクの7割は防ぐことができるのです。

自転車タイヤのパンクといえば、ガラス片やクギを踏むことを想像するかもしれないが、実は理由の大半が「空気圧の低下」(写真出典:weerapat/123RF)。

 

「空気圧の低下によるパンク」とはどのようなものかというと、まず段差などを乗り越えた際に起こりやすい「リム打ちパンク」があります。空気圧が低いタイヤは変形しやすく、その状態で段差を乗り越えると、段差の角の部分とリム(ホイール外縁の円環)のあいだでタイヤが潰され、内部のチューブが破れてしまうというものです。

タイヤとチューブは一体ではないため、空気圧が低いとタイヤ内部でチューブが動き、両者が少しずつ擦り切れてパンクに至るケースも考えられます。

また、空気圧が低下すればタイヤの接地部分が広がり、接地面積が大きくなればそのぶん、ガラス破片などの異物も拾いやすくなります。いずれにせよ、タイヤの空気圧が低下することでタイヤが変形し、これがパンクの直接的な原因になりやすいといえるでしょう。

では、パンクを防ぐために、いったいどれくらいの頻度で「空気入れ」を行うべきなのでしょうか。

 

数日に1回の場合も クルマよりはるかに抜けやすい自転車タイヤの空気

「空気入れの適切な頻度」とひと口にいっても、自転車のタイヤは種類が豊富で、適正な空気圧もタイヤごとに異なっています。大雑把にいえば、いわゆる「ママチャリ」のようなシティサイクル用タイヤは低く、スポーツサイクル用タイヤは高いというのが一般的です。そして、空気圧が高ければ高いほど空気は抜けやすく、頻繁な空気入れが要求されます。

空気圧計付きの空気入れもあるが、目盛りの単位は「bar」と「PSI」の2種類が記載されている(恵 知仁撮影)。

 

タイヤの適正空気圧は、JIS規格に則した製品であれば必ずタイヤ側面に表示されることになっています。ただ、メーカーや製品によって「適正空気圧」が書かれていたり「空気圧の最大値、最小値」が書かれていたり、単位が統一されていなかったりと、表記方法はさまざま。確認には少し注意が必要になります。加えて、乗り手や荷物などの総重量にも注意せねばなりません。おおむね、総重量が大きければ適正値より少し高めに、小さければ少し低めに設定するのが好ましいとされています。

実際の頻度については、あくまで一般的な例にすぎませんが、たとえば適正空気圧が3.0kgf/cm2(=2.9bar=290kpa=43PSI)程度の表示であれば週1回から月1回程度、4.5kgf/cm2(=4.4bar=440kpa=64PSI)なら数日に1回から2週に1回、6.0kgf(=5.8bar=590kpa=86PSI)以上であれば、乗るたびに入れるか数日に1回程度が目安になることが多いようです。

クルマなどに比べてタイヤの空気圧を調整する頻度が高いと思うかもしれませんが、自転車のタイヤは内包できる空気の容量がクルマのそれに比べ著しく少なく、また適正空気圧がクルマよりも高いため空気が抜けやすく、少しの量が抜けるだけで大きく影響が現れるという理由からです。

※「kgf/cm2」「bar」「kpa」「PSI」はそれぞれ、「重量キログラム毎平方センチメートル」「バール」「キロパスカル」「ピーエスアイ(プサイ、重量ポンド毎平方インチ)」と読む。「kgf/cm2」と「PSI」は圧力、応力の単位で、「bar」「kpa」は圧力の単位。

 

「耐パンク性能」が高いタイヤもあるが… 人によっても違う「適正空気圧」

各タイヤメーカーにとっても「耐パンク性能」は非常に大きなテーマのようで、これをうたったタイヤも市場には数多く存在しています。しかし、こういったものを使うだけでパンクが少なくなるかという問いに対しては、「半分YESで半分NO」という回答がふさわしいかもしれません。

「耐パンク性能の高いタイヤ」というと、その多くはゴムが肉厚になっていたり、素材が強固なものになっていたりと、様々な工夫がなされています。しかしタイヤの基本構造が大きく変わることはあまりなく、おおむね適正空気圧での使用がそもそもの前提条件とされています。したがって、こうしたタイヤの耐パンク性能を活かすためにも「適正な空気圧」を保持することは必須といえるでしょう。

なかには、まるで異なるコンセプトでパンクを防ごうとする「エアハブ」(中野鉄工所)という製品も存在します。自転車をこぐ力を利用し、チューブに空気を注入する、つまり、自転車に乗ることで空気圧低下を防ぎ、空気入れのわずらわしさから解放されるというものです。ただし、あくまでホイールの一部品であり、現在これを採用した自転車は市販されておらず、自分でカスタマイズするか自転車店で取り付けてもらうしかありません。

また、タイヤの空気圧が乗り心地にも大きく影響することは、誰しも体感的に知っているでしょう。空気圧を適正数値より少し(10%以内程度)上げればペダルが軽くなり、逆に下げれば地面の衝撃が体に伝わりにくい柔らかな乗り味になることが多いです。この点については乗り手の好みもあるため、自転車に乗るなかで自分にとっての適正な空気圧がどの程度か探すことをおすすめします。

タイヤは、車体と地面をつなぐ自転車の基幹部分です。その空気圧に少しだけ気をつかうこと、定期的な空気入れと適切な空気圧の保持は、快適に自転車へ乗るための不可欠なメンテナンスといえるでしょう。

 

(オトナンサー編集部)


ライター:守宮尚志(ポタリング・ライター)

1977(昭和52)年大阪生まれ。株式会社ヤヤモリモモンガ(http://yamorimomonga.com/)所属のシナリオライター。年間3000kmから1万kmほど走行する趣味のサイクリストで、愛車は買物仕様にカスタムした折り畳み自転車。ママチャリからロードまで、自転車全般の愛好家。ちなみに「ポタリング」とは、「自転車やバイクでぶらつく」という意味。

 

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