衣類についた「カレーの染み」について先日、SNS上で話題になりました。カレーの黄色い染みは、一度ついてしまうとなかなか落ちないことで知られていますが、スパイスの一種「ターメリック」の色素は天日干しすることで落とすことができるといい、実際に試した人からは「本当に落ちた」「びっくり」などの声が上がっています。
実際にこの方法は有効なのでしょうか。東京・旗の台にある三共クリーニングの田村嘉浩社長に聞きました。
紫外線が色素を分解する
Q.そもそも、なぜカレーの汚れは染みになりやすく、落としにくいのでしょうか。
田村さん「カレーなどの『食べこぼし染み』には、多くの食材が混じっています。カレーを作る時に使用しているのは、ターメリックだけではありません。野菜、油(バターや肉の油)、タンパク質などさまざまなものが含まれています。そのため、染みにもいろいろな成分が混じっています。
一般的には、台所用中性洗剤、酸素系漂白剤(液体・粉末)などが役立ちますが、一筋縄ではいきません」
Q.カレーの染みは天日干しすると落ちるのは事実でしょうか。
田村さん「カレーの染みは『油溶性』『タンパク質』『水溶性』『不溶性』『色素』などの汚れを落とさないときれいになりません。今回話題になっている天日干しは、この『色素』に効くということなのです。黒や紺など濃色のポロシャツが、洗濯と天日干しを繰り返した結果、変色してしまった経験はありませんか。その原因は、日光に含まれる紫外線による、染料の退色です。
紫外線には、染料(色素)を分解する力があります。染料・色素は分子同士が結合することで発色して見えるのですが、紫外線でこの結合が切られてしまうと発色できなくなり、染みはあるものの人間の目には見えなくなります。シャツの色が変わってしまうのは困りますが、発色できなくなるのが『染み』であればありがたいですね」
Q.天日干しの方法について教えてください。
田村さん「干すタイミングは洗った後がよいでしょう。紫外線はカレー汚れの洗浄後、最後に残った色素(黄色)だけに効くため、タンパク質など他の汚れを十分取り除いた後に効果があります。
汚れ具合いにもよりますが、油やタンパク質は水に溶けるまでに時間がかかります。洗剤の原液や台所用中性洗剤を染みに塗布して、まず浸け置き洗いしてから洗濯機で洗うのがよいでしょう。
ターメリック(ウコン)染めの風呂敷が、時間と共に色あせてしまうことがあることからも分かるように、原理的には、染みができてから時間がたっていても色素は分解されます。
ただし、衣類の退色・脆化(ぜいか)の問題になるため、長時間の天日干しは避けましょう。白い衣類であればある程度安心ですが、色柄物は製品の染料も退色・劣化するので注意が必要です。白い衣類でも、紫外線で繊維自体が黄変してしまうと元には戻りません。ウール・シルク・化学繊維(特にナイロン)などの素材は要注意です」
(ライフスタイルチーム)