「落ち込みやすい人」と「あまり落ち込まない人」は何が違うのか 落ち込まない人になれる?

投稿日:2020-03-21 更新日:

世の中には「落ち込みやすい人」と「ほとんど落ち込まない人」がいるようです。落ち込みやすい人は、その性質と、どう向き合っていけばよいのでしょうか。

「落ち込みやすい人」の特徴とは?

怒られたとき、失敗したとき、家族や友達とけんかをしたとき…さまざまな理由で「落ち込む」経験は誰しもあるものです。そうした出来事があったとき、「落ち込みやすい人」と「ほとんど落ち込まない人」がいますが、ネット上ではその違いについて、「発想パターンが違うのでは」「完璧主義なのかな」「落ち込むとなかなか立ち直れない」「落ち込まない人になりたいけど難しい」などの声や体験談があります。

「落ち込みやすい」性質と上手に向き合っていくためのコツについて、心理カウンセラーの小日向るり子さんに聞きました。

思春期までの教育が影響

Q.そもそも「落ち込む」とは、心理学的にどのような状態のことでしょうか。

小日向さん「『落ち込む』という状態は、自分にとって不快を感じたり、不利益を受けたりするといった『ネガティブなストレスが加わった際に陥る一過性の憂鬱(ゆううつ)な感情』のことをいいます」

Q.落ち込みやすい性質は、どのように形成されるのでしょうか。

小日向さん「その人に特有の認知、行動、感情などの在り方のことを『パーソナリティー』といいます。パーソナリティーが個人の性格、価値観、倫理観などを形づくる概念となりますが、これは生まれつき持った『気質』と、成育歴の中で形成された『思考の癖』が絡み合って形成されます。つまり、『落ち込みやすい』という性質も含めて、その人のパーソナリティーです。

従って、一様にこれが原因というものはありませんが、自我が形成される思春期までの主たる教育者(親や教師)からの教育は、後天的な性格形成に大きな影響を与えるといえるでしょう。例えば、ダメ出しが多い教育を受けて育った場合、自己肯定感情が低く成長することが多く、社会に出て上司などから叱責されると、『ああ、やっぱり自分はダメ人間なんだ』と深く落ち込みがちです。また逆に、褒められてばかりで叱責を知らずに育った場合、少しの叱責でひどく落ち込む性格になりやすいです。

つまり、一般社会の通念と照らし合わせて『過度な』教育を受けると、社会に出た際、刺激に対して過剰に反応する性格形成につながりやすく、それは『落ち込む』ということにおいても例外ではありません」

Q.落ち込みやすい人/落ち込みにくい人には、それぞれどのような特徴がみられるのでしょうか。

小日向さん「人生にうれしいことや楽しいことしか起こらない人は一人もいないので、落ち込むことは万人に生じる感情です。その際に『落ち込みやすい人』と『落ち込みにくい人』を分けるのは、起こった出来事ではなく、それをその人が『どう受け止めるか』という認知の仕方の違いです。

例えば、上司から叱責を受ければ誰でも落ち込みますが、その際に『次はミスしないぞ。付箋に書いて机に貼っておこう』などとポジティブに受け止めるのか、『自分には無理だ。この会社は向いていないから辞めたい』などとネガティブに受け止めるのか、ということです。また、こうした受け止め方だけでなく、落ち込んだ後のリカバリー方法を持っているか否かということも、落ち込みの深さを分けるポイントとなります」

Q.「落ち込みやすいこと」のメリットとデメリットとは。

小日向さん「人は基本的に変化を恐れる生き物です。つまり、自分にとって不都合な感情がなければ、そこにとどまってしまうのです。不快な思いをするからこそ反省し、次はそうした思いをしないように学習し、その結果、成長するのです。そうした意味では、『落ち込みやすい』という性格は、成長へのきっかけをたくさん持つことができるというメリットがあります。

一方で、落ち込んだ状態からはい上がるにはエネルギーを要するため、落ち込みを頻繁に繰り返したり、深いところまで落ちてしまったりすると疲弊してしまいます。このような状態になると、うつ病などの精神疾患にかかりやすくなるというデメリットがあります」

「落ち込みにくい人」になれる?

Q.落ち込んだとき、できるだけ早く気持ちを回復させるためにするべき意識や行動は、どういったものでしょうか。

小日向さん「先述の通り、落ち込んだときに回復を早めるためには、自身の『認知の仕方』の修正と『リカバリー術』の確立という2つのポイントがあります。認知は、自分にとって最もポジティブな気持ちになれるものであれば、どう思っても自由です。例えば、上司に叱責された場合に『次は仕事の手順を変更してやってみよう』と具体的にやり方を変えるもよし、『あんな無能な上司、いつか見返してやる!』と口惜しい気持ちをバネにしてもよしです。

そして、もう一つのリカバリー術とは、言い換えると『趣味や気晴らしを持つ』ということです。こうしたものがあると、落ち込みが深くなる前に気持ちを立て直すことができます。運動する、飲みに行く、ゲームをするなど、嫌な気分を忘れられるものを一つだけでなく、いくつか持っておくとなおよいでしょう」

Q.「落ち込みやすい人」が、「落ち込みにくい人」になることは可能でしょうか。

小日向さん「可能です。もちろん、生まれ持った気質があるので、元々繊細で傷付きやすい人が、まるで人が変わったように楽天的になれるわけではありませんが、先述の『認知(受け止め方)』を変えることと『リカバリー術を持つこと』で少しずつ変わってきます。

そのための第一歩は、『自分自身がどういうものの受け止め方をして、どんなことをすると心地よいのか』という自己分析をしてみることです。紙に、フローチャートのように『起きた出来事→その時の自分の受け止め方→(それがネガティブなものであった場合)どう受け止めたら気持ちが上がるか』を書き出してみてもよいですし、カウンセラーのような専門家に話しながら自分の感情を整理していくのもよいでしょう。

また、リカバリー術では、右脳を使う運動や芸術系の趣味を持つことをおすすめします。なぜなら、仕事やそれに関わる他者とのコミュニケーションには、左脳を使うことが多いからです。左脳と右脳をバランスよく使うことでストレスは軽減するので、精神衛生上とても有効なのです」

Q.「自分は落ち込みやすいタイプだ」と悩む人は少なくないようです。

小日向さん「落ち込みやすい人は繊細で優しく、物事を真正面から受け止める真面目な人が多いです。そのため、落ち込んだときも他人を悪く思うことができず『自分が悪いのだ』などと自分を責めてしまったり、あるいは真面目さゆえに『こんなダメ人間ではいけない、もっと頑張らなければ』と自分を追い込んだりしてしまいます。

しかし、その繊細さと優しさは、まず自分のために使うべきです。不快感情でへこんでいる心の傷を、さらに自分で深くする思考をしてしまっては自分自身がかわいそうですよね。心で誰に何を思おうと自由ですし、楽しみも他人に迷惑をかけるものでなければ何をしてもよいのです。まず、そこを念頭に置いて、自分が傷つかない認知の仕方と心地よい気分転換を見つけてほしいと思います」

(オトナンサー編集部)

小日向るり子(こひなた・るりこ)
心理カウンセラー

カウンセリングスペース「フィールマインド」代表。出版社で働きながらボランティアで電話相談員を始めたことが、カウンセリングの世界に入るきっかけに。資格取得後、行政機関でのセクハラ相談員を経て、2012年に独立。2019年4月現在、約3500件の相談実績を持つ。メディア、ネットなどで心理・恋愛系コラムを多数執筆。フィールマインド(http://feel-mind.net/)。

 

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