さまざまな割引サービスが待つ
新幹線は特急列車だけが走る高速鉄道。乗車券のほかに特急券も買わなければ乗れません。都市と都市とを結ぶ長距離路線のため、実際に乗る距離も長くなりがちです。運賃や料金はどうしても高くなってしまいます。
東京~新大阪間で「のぞみ」普通車指定席を利用する場合、所定の運賃と料金の合計(大人、片道、通常期の場合。以下同じ)は1万4450円。往復なら2万8900円です。約500kmに及ぶ距離を数時間で移動できるとはいえ、数万円レベルの金額だと「もう少し安くならないかなぁ」と思っている人も多いのではないでしょうか。
さまざまな制限や注意事項があるものの、所定の金額より安くなる割引サービスがないわけではありません。東京から西に伸びる東海道・山陽新幹線と九州新幹線では、どんなサービスを利用すれば安くなるのでしょうか。
安く利用する方法として昔からあるのが回数券です。東京~新大阪間の新幹線回数券(普通車指定席用)は、6枚セットで8万2140円。1枚あたりなら1万3690円で、所定より760円安くなります。ただし、発売されている区間が限定されていて、ゴールデンウィークなど利用できない期間があるなどの制限が設けられています。
手軽さを重視するなら「スマートEX」を利用するのもいいでしょう。これは手元にある交通系ICカードとクレジットカードを登録することで、紙のきっぷを買うことなく新幹線を利用できるチケットレスのネット予約サービス。運賃と料金は所定より200円安くなります。回数券ほどの割安感はないものの、利用できない区間や期間の制限はありません。
遅い「ひかり」「こだま」を使う手も
また、エクスプレス予約には早期予約割引の「EX早特」や「EX早得21」などもあります。乗車日の3日前までに予約することを条件に「こだま」のグリーン車が利用できる「EXこだまグリーン早特」の場合、東京~静岡間は6030円。グリーン車を所定価格で利用するより安いのはもちろんですが、普通車指定席の所定価格と比べても320円安くなります。
「のぞみ」より停車駅が多い「ひかり」や各駅停車の「こだま」も、選択肢のひとつとして考えてもいいでしょう。東京~新大阪間の場合、所要時間は「のぞみ」が2時間30分程度なのに対し、「ひかり」は3時間前後、「こだま」は約4時間。その代わり、「ひかり」「こだま」普通車指定席の所定価格は「のぞみ」より400円安くなります。
「ひかり」「こだま」限定の旅行商品も販売されています。東海道新幹線では、「こだま」の普通車指定席のみ利用できる旅行商品「ぷらっとこだま」をJR東海ツアーズなどの旅行会社が販売。東京~新大阪間の普通車指定席なら1万500円で、所定価格より4000円近く安くなります。
山陽新幹線にも「ひかり・こだまでGO!GO!」(JTB)や「バリ得こだま・ひかり号」(日本旅行)という旅行商品があり、一部の「ひかり」「こだま」を安く利用できます。これらの旅行商品を利用した場合、新大阪~博多間は7500円前後。所定価格は1万5000円ですから、ほぼ半額です。
安い話には「注意」が必要
ただ、こうした割引サービスは「乗車当日に購入できない」「購入後の変更ができない」などといった制約がある場合も多く、注意が必要です。利用の仕方によっては所定のきっぷより高くなる場合もあります。
たとえば、スマートEXを使って小岩駅(東京都江戸川区)から大阪駅まで移動(東京~新大阪間は「のぞみ」普通車指定席、それ以外の区間は普通列車の普通車自由席を利用)する場合、小岩→東京間と新大阪→大阪間は別に乗車券を購入する必要があり、合計額は1万4630円になります。
いっぽう、所定のきっぷは東京都区内→大阪市内間の乗車券と東京→新大阪間の新幹線指定席特急券の組み合わせになるため、東京~新大阪間だけを移動する場合と同じ1万4450円。実はスマートEXを使うより180円安いのです。新幹線回数券(普通車指定席用)も設定区間は東京都区内~大阪市内間のため、スマートEXの方が940円高くなってしまいます。
このように、「安い話」にすぐ飛びつくのではなく、所定価格と割引サービスのそれぞれのメリット、デメリットを比べたうえで、どのサービスを選択するかを考えた方がいいでしょう。
【了】
【写真】山陽新幹線なら半額プランも
Writer: 草町義和(鉄道ライター)
1969年、新潟県南魚沼市生まれ。鉄道趣味誌で列車の乗車ルポや幻の鉄道(未成線)の散策記などを多数発表してきた。著書に『鉄道計画は変わる。』(交通新聞社)など。趣味はアサガオ、ゴーヤの栽培。
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