【2021年4月施行】いま、知っておきたい介護保険制度〈前編〉

投稿日:2021-04-01 更新日:

photo by akizou/acworks

——社会全体で高齢者介護を支えるしくみとして、2000年4月にスタートした介護保険制度。社会情勢や利用状況などを反映しながら、定期的に見直しが行われてきました。この6月にも法律の改正があり、2021年4月から施行される予定です。新しい制度では、何が変わったのでしょうか。介護サービスの利用者やその家族が知っておきたいポイントをまとめます。

※本稿は『〈図解〉2021年度介護保険の改正 早わかりガイド』をもとに再編集しています。

介護保険の対象は「40歳以上」

そもそも、介護保険はどんな制度なのでしょう。改正内容を理解するためにも、まずは基本的なしくみを押さえておきましょう。

日本の社会保険制度には、「医療保険(健康保険)」「雇用保険」「労災保険」「年金」「介護保険」の5つの分野があります。それぞれ、病気、失業、労働災害、高齢化、介護というリスクに備えて、公的に保障するしくみです。

このうち介護保険は、「65歳以上」または「40~64歳の特定疾病(とくていしっぺい)を患っている人」が、介護や介助、介護予防が必要になったときに居住地の市町村(特別区を含む)などに申請して所定のサービスを利用できる制度です。

特定疾病とは、末期がん、関節リウマチ、初老期認知症、脳血管疾患、糖尿病性腎症および網膜症など、加齢に伴う病気のこと(厚生労働省の指定で16種類)。介護保険は、高齢者だけでなく、40歳以上の人も必要に応じて利用できるのです。

〔介護保険を利用できる人〕
 ・65歳以上(第1号被保険者)
  →保険料は「年金から天引き(特別徴収)」または「市町村による個別徴収(普通徴収)」
 ・40~64歳の医療保険加入者(第2号被保険者) 
  →保険料は「医療保険と一緒に徴収」 ※通常、被扶養者=専業主婦(夫)は支払い不要

保険料の決め方は、年齢や加入している健康保険組合、市町村などによって異なりますが、全国平均で月額6771円(厚生労働省2020年度推計値)。ただし、市町村によって格差があり、高いところと低いところで約3倍もの開きがあります。

利用するには「要介護認定」が必要

医療保険では、ケガや病気の程度を「医師」が診断し、それを前提に治療が行われますが、介護保険では市町村の「介護認定審査会」が申請者の健康状態や生活環境などから要介護度(ようかいごど=介護の必要度合い)を判定し、それをもとに「市町村」がサービスの受給を決定します。

要介護度を判定することを「要介護認定」といい、軽い方から「要支援1または2」「要介護1~5」の7段階に分類されています。

要支援1または2
身体または精神の障害(認知症など)があるために、一定期間(6か月ほど)にわたり継続して、自ら掃除、洗濯、買い物など身のまわりのことができないなど、日常生活を営むのに支障があり、その状態の軽減や悪化を防止するために介護予防サービスなどを利用したほうがよいと見込まれた状態

要介護1~5
身体または精神の障害(認知症など)があるために、入浴、排泄、食事など日常生活における基本的動作の全部または一部について、一定期間(6か月ほど)にわたり継続して、常時介護が必要と見込まれた状態

介護保険を利用しようと思ったら、まず市町村などに申請をして、この要介護認定を受けなくてはなりません。

ただし、利用者本人が役所へ行かれない場合は「申請代行」という方法もあります。ケアマネジャー(介護支援専門員)のいる介護支援事業者や地域包括支援センター、自治体の指定介護事業者などに依頼するか、入院している場合は病院のソーシャルワーカーを通して申請することもできます。

介護保険で受けられるサービス

介護保険のサービスは、原則として「現物給付」です。大きく分けて、次のようなサービスがあります。
このほか、車いすや歩行補助つえなど「福祉用具の貸与」や、入浴や排せつなどに使用する「特定福祉用具の購入費の支給」、手すりの取り付けや段差解消など「住宅改修費の支給」といった支援サービスもあります。

また、要介護1〜5の人は次の介護保険施設の利用ができますが、要介護度や施設基準に応じて負担する費用は異なります。

〔介護保険施設〕
 ①介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム=略称:特養)
 ②介護老人保健施設(略称:老健)
 ③介護療養型医療施設(介護療養病床) 
 ④介護医療院

このように、介護保険では要介護度に応じて利用できるサービスの量や限度額が決まっており、これをもとに、利用者の意思や生活状況などを踏まえて「ケアプラン(介護サービス計画)」を立てることになります。

〔要介護認定の基準に満たないとき、追加サービスを利用したいとき〕
要介護認定の基準に満たないときや、限度額以上の追加サービスを利用したいときは、利用者が費用を負担すれば、各市町村が独自に設けている介護予防や生活支援のサービスなどを自由に組み合わせて利用することも可能です。これは「上乗せサービス」「横出しサービス」「介護保険にないサービス」といわれるもので、介護保険の特徴的なサービスといえるでしょう。

〈後編〉へつづく


著者プロフィール:井戸 美枝(いど みえ)
CFP®、社会保険労務士。講演や執筆、テレビ、ラジオ出演などを通じ、生活に身近な経済問題をはじめ、年金・社会保障問題を専門とする。社会保障審議会企業年金・個人年金部会委員。経済エッセイストとしても活動。「むずかしいことでもわかりやすく」をモットーに数々の雑誌や新聞に連載を持つ。著書に、『〈図解〉2021年度介護保険の改正 早わかりガイド』(日本実業出版社)ほか、『100歳までお金に苦労しない定年夫婦になる』(集英社)、『届け出だけでもらえるお金』(プレジデント社)、『受給額が増える! 書き込み式得する年金ドリル』(宝島社)、『一般論はもういいので、私の老後のお金「答え」をください!』(日経BP社)などがある。

書籍引用:〈図解〉2021年度介護保険の改正 早わかりガイド 著者:井戸美枝 価格:¥1,540(税込)
記事提供:日本実業出版社

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