不安なのは知らないから。「発達障害」のキホン

投稿日:2021-02-07 更新日:

(photo by Green Planet/photoAC)

あの芸能人も発達障害で苦しんでいた

――ネガティブキャラでブレイクしたタレントの栗原類さんが、8歳のころ、発達障害のひとつであるADD(注意欠陥障害)の診断を受けていたことを明かした。(2016.6.22 デイリースポーツonlineより

この、表舞台で活躍していた芸能人の告白は大きなニュースとなったので、「発達障害」というワードは広く認知されるようになりました。

その一方で、「発達障害」という名称のみが先行し、障害の特徴や接し方の理解が追いついていないのが現状です。子どもをもつお母さんの中には、検診や学校で、はじめて聞いて、とまどう人もいるかもしれません。

「同級生が発達障害らしいけど、どう対応すればいいんだろう」
「発達障害だと、なにができないの?」

このように知らない言葉にたいして、人は不安を感じるものです。しかし、正しく理解すれば、不安は少なくなるはずです。そこで今回、新しい概念として世の中に広がりつつある「発達障害」について、紹介しましょう。

【本稿は『子どもの発達障害と支援のしかたがわかる本』(西永 堅:著)より一部転載しています】

「発達障害」とは?

発達障害とは、発達期において判断される、発達の全般的な遅れや部分的な遅れ、偏りによる障害のことを指し、広汎性発達障害(自閉症、アスペルガー症候群、高機能自閉症など)∗、ADHD(注意欠陥多動性障害)、LD(学習障害)、知的障害などをまとめた名称です。

しかし「発達障害」のような名称は、あくまでも行政や研究者のために便宜的につくられた定義や分類であり、障害の種類や状態は多岐にわたり、さまざまな特徴があるという理解が必要です。

また「発達が遅い」というのも、同年齢の子どもたちの平均と比べた相対的な評価であり、その子なりの発達を見ていくことが大切です。

∗アメリカ精神医学会の診断基準である「DSM-5」では、「自閉スペクトラム症」に名称変更されました。

発達障害の人が抱える困難とは?

発達障害の人の社会生活上での困難さは多岐にわたるため、周囲の理解や、それぞれの特徴に応じた適切な支援が必要とされています。発達障害の特徴は主に大きく4つにわけられます。

1、 学習面の困難(LD〔学習障害〕)

LDの場合、全般的な知的発達の遅れはないものの、文章を書くことや筆算をすることが苦手など、学習面で得意なこと苦手なことの差が特に大きく、学校において大きな困難を抱えます。苦手な部分もあるけれど、得意なところもあるというのがLDの最大の特徴です。

アメリカ出身の俳優、トム・クルーズは失読症(文字の読み書きに困難を抱える)で長年苦しみ、セリフを覚える際は、内容をテープに録音してもらうようにしていたそうです。

2、 行動上の困難(ADHD〔注意欠陥多動性障害〕)

ADHDの特徴としては、不注意、衝動性、多動性が見られます。

「不注意」とは、忘れ物が多かったり、おっちょこちょいでよく物を壊したり、ぶつけてしまったりすること。「衝動性」とは、思い立ったことをすぐ行動に移したり、すぐカッとなってけんかをしてしまうこと、「多動性」とは、授業中や全校集会、行事などで落ち着いて先生の話を聞けずに、手遊びや立ち歩いてしまったりする行動がよく見られることです。

3、 社会性面の困難(自閉スペクトラム症)

友人関係や対人関係において困難があるのは、自閉スペクトラム症の特徴です。

自閉スペクトラム症は、単純な記憶(数字の羅列、形など)は得意なこともありますが、その一方であいまいなことを理解するのが苦手です。また、複雑なルールの理解が難しかったり、その逆でルールに強くこだわってしまうので、他人とトラブルになりやすく、社会性面での困難さを生じます。しかし理解したことに関しては、とても素晴らしい記憶力があったりします。

4、 全般的な発達の遅れ(知的障害)

学習障害とは異なり全般的に発達が緩やかで、知能指数(IQ)が70以下であると、「知的障害」と呼ばれます。知的障害の場合は、その子どもの発達年齢に合わせた課題の用意が必要となります。

知的障害がある子どもたちは、特に言葉の発達が遅れたり、「短期記憶」(短時間に一度に覚えられる記憶)が苦手ですが、経験したことや体験したことを長期間覚えておく「長期記憶」にはそれほど障害がないといわれています。したがって、言葉での説明や机上の学習よりも、体験学習をしていく中で、言葉や認知発達をうながしていくことが大事だと考えられます。

発達障害を対象とした、支援プログラム

発達障害に対しての指導・支援プログラムには、さまざまな種類があり、インターネットなどで検索すると、「発達障害が治った」などの記述が見られることがあります。

しかし、それを、そのまま信じてもよいのでしょうか?

原因が明確な疾患であれば、その原因に対しての治療方法が明確であったりしますが、発達障害は明確な原因が明らかになっておらず、常に対症療法(原因を直接治すのではなく、表出している問題に対応すること)が中心です。

したがって、ある子どもに有効だった支援プログラムが、必ずしも別の似たような症状をもつ子どもにあてはまるとは限りません。

たとえば、授業に集中できずに離席をすることが多い子どもがいるとすれば、ただ「座りなさい」と何度も教示するよりも、たまたま座ったときに、すかさずほめたり肯定的なフィードバックをすることで、「座っていることは良いことだ」と学習することへとつなげる。

また、言葉の発達が遅れている子どもたちには、「これは○○だね」と、しっかりと言葉のフィードバックを行なうことで、「これは○○なのだ」と子どもに学習を促すなど、障害を受けいれたうえで少しずつ適切な行動を増やすことを重視した支援プログラムが、さまざまな場所で行なわれるようになってきています。

「インクルージョン」という新しい支援のかたち

そんな中、新しい支援のかたちとして注目されているのが、「インクルージョン」です。これは障害の有無や種別を超えて、さまざまな観点から子どもたちの発達に応じた教育を行なっていこうとする考え方です。

そこで重要なのは、子どもを障害名にあてはめるのではなく、子どもの中には、いろいろな特徴があるという理解です。

たとえば、ダウン症であっても、自閉スペクトラム症のような行動パターンを示す場合もありますし、同じ学習障害であっても、読み書き障害と算数障害とでは対応は異なります。そして、読み書き障害があるために社会性に困難を示す子どももいます。また今後、脳認知科学のさらなる発展によって、新しい障害も発見されるかもしれません。

したがって、「○◯障害だから△△な支援が必要」と考えるのではなく、「Kくんには、○◯障害のようなニーズがあるから、そちらの支援を応用しながら、全体をサポートしていこう」という考え方が大切になります。

「発達障害」という、行政や研究者にとって便宜的につくられた名称にとらわれることなく、1人ひとりのニーズに応じて支援する。「みんな違って、みんないい」と表わされるように、社会に生きる私たちそれぞれが、障害の有無にかかわらずニーズに応じた支援を行ないながらできることを増やしていく。そういった発想がこれからは大事になるのではないでしょうか。
***

最近耳にするようになったADHDや自閉症、LDなどの発達障害。実はみなさんご存じの有名人や芸能人も発達障害の特徴を抱えながら、さまざまな素晴らしい活動を行なってきました。

つまり「発達障害」はことさら特別扱いするものではなく、いわば個性といえます。基本的なことからでいいので、発達障害について知ってみてはいかがでしょう。

書籍引用:子どもの発達障害と支援のしかたがわかる本 著者:西永堅 価格:¥1,650(税込)
記事提供:日本実業出版社

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