「いい成績」が目標の時代は終了! 子どもの才能を開花させる教育とは?

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去る9月9日(日)、紀伊國屋書店新宿本店で、茂木健一郎さんのトークショーが行われました。新刊『5歳までにやっておきたい 本当にかしこい脳の育て方』の内容に加えて受験、教育のトレンドについての話題で、お子さん連れのお母さんを中心に満員となった会場は大いに盛り上がりました。ここでは茂木さんのトークのポイントを紹介します。
(文責:日本実業出版社)

受験勉強の意味がなくなってきた

にこやかに登場した茂木さん。ユーモラスな表情を見せながらも、日本の学校教育、家庭教育の現状に対して厳しい見方を披露します。

「いま世界では、教育に対する考え方が大きく変化しているんですね。その最大の要因は人工知能です。これから私たち人間は、人工知能ができないことをやらなければならない。だから教育も変わらなければならない。

 だけどあいかわらず日本の親御さんたちは、子どもを立派な大人に育てようと“お受験”させて、子どもも一生懸命勉強していい大学を目指す。でもこれは、人工知能にも解けるような問題を必死になって勉強しているのと同じことなんです。日本の受験勉強に過剰に適応してしまうと、これからの時代に必要な、自分で興味関心事を見つけて熱中したり、未知の世界を冒険したりする力は育ちません」

そして、いま教育界にはイノベーションが起こっていることを強調しました。

「テストの点数や偏差値で優秀さが測られる時代はもう終わりはじめていて、もっというと、学校での成績や態度でその子がいいか悪いかが決められる時代も終わろうとしています。脱テスト化、脱学校化がいまの教育の潮流だと考えていただきたいんですよ。

 いままでの“いい子育て”のイメージは、いい成績をとっていい大学へ行っていい会社に入る、というものだったと思うんですが、そのプロセスで測られる能力は、世界的に見るとどんどん意味がなくなってきている。日本の有力大学の国際ランキングの下落にも、それは表れていますね。

 そんな中で、教育の世界ではイノベーションが起こっています。株式会社が学校を設置したり、独自の教育を展開したり。たとえば、私の友人である竹内薫がつくったインターナショナルスクールは日本語と英語、それにプログラミング言語のトライリンガル教育をやっています。

 イタリアのレッジョ・エミリア県を中心に実践されているレッジョ・エミリア・アプローチという教育システムも従来の教育とは違うものです。子どもたちにとにかく多くの表現方法を与えようという教育法で、絵を書いたり工作したり、歌ったり踊ったり、詩をつくったり、いろんな表現の方法を教えて子どもの才能の開花をサポートしています。

 またアメリカでは、ホームスクーリングといって学校へ通わずに家で勉強する子どもが100万人以上いて、どんどん増えている。こういう新しいアプローチがたくさん出てきています」

いままでの成功体験を捨てよう

では親や大人たちは、子育てに対してどのように考えればいいのでしょうか。茂木さんは、従来の成功体験を捨てるべきだ、と主張します。

「まずは、自分たちが経験してきた成功モデルが終わっていることを理解しなければいけないでしょう。偏差値の高い学校に入って、日本の一流企業に就職できれば安心というパイは急速に縮小しているし、従来の職業のヒエラルキーが壊れようとしている。かつての成功方程式はもう通用しないということです。

文科省自体が、国際バカロレア資格を取得できる学校の設置を推進しているし、近い将来すべての大学の入試がAO入試になるだろうというのがぼくの予想です。そうなると、偏差値の高い大学を目指して、お受験のころから18歳までいろんなことを我慢して努力する、なんていうことには意味がなくなると思うんです。

むしろ、偏差値とか受験勉強はそこそこなんだけどほかの何か、たとえばプログラミングがすごく得意だとか、外国で生活して勉強した経験があるとか、そういう子のほうが後々成功する可能性が高い。

 さきほどいったようにいまは教育イノベーションの時代で、オプションがどんどん増えています。とにかく情報をたくさん集めて、いい成績をとることよりもその子の個性をどう伸ばしていくかを重視して考えてみてください。

 たとえばいま塾業界では、従来の受験対策ではなく、探究学習、アクティブラーニングをサポートする活動を重視する塾やNPOが増えてきています。ホームスクーリングはハードルが高くても、そうした塾などを活用すれば、普通の小学校に通いながらも課外活動として表現活動やプログラミングなど、その子の好きなことを探究させることもできます。

 最近では、いままでの常識からはずれた、非典型的なキャリアの人の成功事例もたくさんあります。そういう事例も参考にしながら、周囲に流されずに、お子さんにとってのベストプラクティスを探すことです」

心のなかの「インナーチャイルド」を大切に

さて、ランニングが趣味の茂木さん。今朝も都内某所を走っていたのですが、こんな光景を目撃したそうです。
「男の子が泣きながらお母さんを追いかけていて。お母さんはもう知りません!っていって先にスタスタ行っちゃってる。あれはダメですよ。子どもが泣いたら抱っこ、これ基本です。日本のお母さんはときどきとても冷たい(笑)。あれは何でかなあ?」お母さんたちにユーモラスに問いかけながら、子どもの「安全基地」になりましょう、と呼びかけます。

「親の役割は子どもの安全基地になってあげるということです。安全基地があるからこそ、子どもは外の世界に対して興味がわき、探索しようとします。一番大事なのは、子どもの挑戦を邪魔しないことです。そして、どんなことがあっても子どもをやさしく見守ってあげること。

 ぼくの母親は、ぼくが蝶の研究に没頭するのを決して止めませんでした。これはありがたかった。いまにして思えば、この時代に体験したことがぼくの人生にとって一番役に立っている気がします。

 自分でいろんな世界を探索することを覚えた子どもは、その後もどんどん、勝手に世界を冒険していくようになります。起業家になるか歌舞伎役者になるか、フラワーアレンジメントをする人になるかはわかりませんが、これからは、ある世界をとことん突きつめられる人が一番面白い時代だし、そうじゃないと日本の国全体が発展しない。そういう創意工夫ができる子どもを育てていければ、とぼくは思います。

 それから、インナーチャイルドといいますが、大人の皆さんだって心のどこかに子どものような気持ちを持ち続けているんですよね。だからいくつになっても、子どもと同じようにチャレンジできることを忘れないでほしいですね。そういう気持ちを大切にすると、子どもを育てるだけじゃなくて、自分自身も成長することができますから」

大人たちへのメッセージで講演は締めくくられました。この後の質疑応答も含め、大いに盛り上がったトークショーでした!


書籍引用:5歳までにやっておきたい 本当にかしこい脳の育て方著者:茂木健一郎 価格:¥1,540(税込)
記事提供:日本実業出版社

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