皆さんは「エコノミークラス症候群」という言葉を目にしたことはありますか。
エコノミークラスというと、真っ先に、飛行機の「エコノミークラス」を想像することと思いますが、この病気はまさに、そのエコノミークラスに由来します。
最近では、2016年4月の熊本地震などの災害時にも発生したことから、注目を集めているエコノミークラス症候群とは一体、どのような病気なのか――。オトナンサー編集部では医師の髙田女里さんに聞きました。
血栓が肺の動脈を詰まらせる
髙田さんによると、エコノミークラス症候群は、狭い空間に長時間、同じ姿勢でいることで脚(特に膝裏)の静脈内に血栓(血の塊)ができ、歩き出した後に、血栓が肺の動脈を詰まらせることで呼吸困難になったり、死に至ったりする病気です。エコノミークラスのような狭い空間に長時間、同じ姿勢で座っていると発症しやすいことから、この名称になりました。
「この病気はエコノミークラスに限らず、ビジネスクラスやファーストクラスでも発症する可能性があります。高速バスなどでも、長時間同じ姿勢でいれば発症する可能性があり、最近では震災後の車中泊などでも発症しています」(髙田さん)
その症状としては、脚に血栓ができれば脚の腫れや痛み、血栓が肺の動脈に詰まれば、呼吸困難や胸の痛みなどがみられます。かかりやすいのは、高齢者や寝たきりの人、40歳以上の女性などです。
脱水も要因「適切な水分補給を」
では、エコノミークラス症候群の発症はどうしたら防げるのでしょうか。
髙田さんによると、会議などで座席に座ったままの状態を余儀なくされている場合は、時々足首を曲げたり、かかとを上げたりしてストレッチ運動をすること。また、飛行機などであれば機内を歩くことなどが予防につながります。「脱水も一つの要因となるため、アルコールやコーヒーなどの飲み物は控え、適切に水分補給しましょう」。
万が一、発症してしまった場合の応急処置としては、一刻も早く病院へ搬送することが挙げられます。「エコノミークラス症候群は死に至る危険性もあるため、病院で血液検査や胸のCT検査を受け、血栓を溶かす薬を使ったり、カテーテル治療で直接血栓を取り除いたりする治療が行われます」。
(オトナンサー編集部)
ライター:髙田女里(たかだ・めり)
医師(形成外科)・医学博士(法医学)
1980年8月15日生まれ。慶応義塾大学法学部法律学科の憲法ゼミで学んだ後、医師を目指して秋田大学医学部へ学士編入。医師免許取得後、2年間研修医として各科を回り、その後、法医学分野の博士号を取得した。日本形成外科学会会員、日本抗加齢医学会会員、日本医師会認定産業医。(http://ameblo.jp/yoshiko-onishi/)。