住宅ローンを借り入れるとき、ほとんどの金融機関では「団体信用生命保険」への加入が融資の条件となっています。
ただし、住宅金融支援機構のフラット35と一部の金融機関では任意加入となります。
団体信用生命保険というのは、住宅ローン返済中に契約者が死亡または高度障害などの理由でローン返済が不可能になった場合、住宅ローンの残債を保険会社の保険金で相殺するというものです。
団体信用生命保険を使うような具体的ケースとは?
たとえば、残債が2000万円ある状態で死亡してしまった場合は、保険会社から金融機関に2000万円が支払われ、住宅ローンの残債はゼロになります。
遺族には保険金は支払われませんが、実質保険金として2000万円が支払われたのと同じことなのです。
この保険に加入することで、契約者に万が一のことが起きた際、遺された家族は住宅ローンの返済に苦しむことがなくなります。
融資する金融機関側にとっても、滞納や不良債権化するリスクがなくなるため、双方にメリットのある保険といえるでしょう。
契約者の万が一に備える「団体信用生命保険」
強制加入となる場合、保険料の負担はありませんが、フラット35利用時に任意で加入した場合は、借入金額1000万円あたり年間3万5800円の保険料が必要になります。
生命保険の保険料は年齢などの条件によって変わるため単純な比較はできませんが、生命保険文化センターの調査結果(平成25年)では、生命保険料の平均額は男性で年24万1000円でした。
約6分の1の保険料で数千万の保障がつくと考えれば、任意でも加入しておいた方がよいでしょう。
最近よく聞かれる「保険付き住宅ローン」とは?
近年、住宅ローンにガンや疾病保障の特約をつけた「保険つき住宅ローン」というものが増えています。
疾病保障は、
● ガン
● 急性心筋梗塞
● 脳卒中
の三大疾病をメインに、生活習慣病を保障対象に加えた七大疾病、八大疾病などがあります。
これらの保障対象の病気になった場合、日数などの条件を満たした場合、毎月の返済額を保障したり、住宅ローンの残債がゼロになったりします。
住宅ローンの残債がなくなるのであれば補償額も大きく、一見良さそうな保険に思えますが、治療や入院、手術に対する保険金は一切ありません。
また、ほとんどの場合、途中解約ができないため、保険料を住宅ローンの返済期間中ずっと払い続けることになります。
保険料は金融機関によって異なりますが、0.3%前後の上乗せが主流です。
住宅ローンの金額によって変わりますが、最低でも毎月2000円以上の負担増となってしまいます。
現在、保険にまったく加入していない方は検討してもよいかもしれませんが、すでに保険に加入している方は、それほど必要な保険とは思えません。
毎月2000円以上の負担になるのであれば、医療保険や県民共済へ加入し、ライフステージによって適切な保険に切り替えていった方がよいのではないでしょうか。
【ライター】
小日向 淳(フリー編集・ライター)
家計の節約術から資産運用、老後資金、相続対策などを中心に構成から執筆までを手がける。『法改正対応 バッチリ相続まるわかり 2015-16年版』(学研マーケティング)/『これで安心! 月5000円からはじめる老後資金の作り方』(宝島社)/『親の入院・介護で困らない!)』(宝島社)ほか、書籍、雑誌、ムック、Web記事など多数。
【参考】
住宅金融支援機構、生命保険文化センター、ママニティ